Cerebral Aneurysm and Subarachnoid Hemorrhage

脳動脈瘤・
くも膜下出血

脳に関する診療内容を
ご紹介します。

脳に関する診療内容を
ご紹介します。

脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)とは?

“瘤”というのはコブのことです。“脳 動脈 瘤”ですので、脳の動脈にできたコブということになります。
名前を恐ろしく感じる方もおられるかもしれませんが、多少のものができたとしても、すぐに大きな心配をする必要はない方がほとんどです。実はこの脳動脈瘤、それがあるだけで症状を出すことはあまりないです。

では、何が問題かと言いますと、この脳動脈瘤、突然に破れて出血を起こすのです。脳動脈瘤から出血しますと、そのほとんどは“くも膜下出血”になります。
動脈からの出血ですので勢いも強く、急激に脳圧が上がるため、激しい頭痛を起こします。
「突然ハンマーで殴られたような。」、のように表現される患者さんが多いです。脳圧の上がり方が強く、脳のダメージがかなり強い場合は、くも膜下出血からほどなくして、意識も昏睡状態となり、呼吸状態も悪くなってしまい、即死に近い状態となります。

病院にたどり着いた場合、治療は動脈瘤をふさいで、再出血を起こさせないこと、となります。
動脈瘤をふさぐための手術には開頭手術とカテーテル治療のふたつがあります。
どちらを行うかは、動脈瘤ができた場所や、動脈瘤の大きさ、症状、年齢などで総合的な判断となります。

くも膜下出血を起こした時の出血量が少なく、手術も早期にできた方は、後遺症なく回復される方もおられます。一方で、脳のダメージが強かった場合、手術が間に合ったとしても、後遺症が残ってしまう方もおられます。

くも膜下出血になった著名人

  • 木村拓也 2010年 元広島カープ選手・読売ジャイアンツコーチ
  • KEIKO 2011年 歌手
  • 星野源 2012年 歌手・俳優
脳動脈瘤というコブが破れて、くも膜下腔という隙間に出血する “くも膜下出血” のイメージ

症状

こんな症状はありませんか?

下記のような症状のある方は受診していただくことをお勧めします。

  • 激しい頭痛
  • 片方のまぶたが下がる
  • うなじや後頭部などに強い痛みが起きる

治療と予防

動脈瘤の破裂・くも膜下出血、と重い病気の話をしましたが、動脈瘤があっても、くも膜下出血を起こす可能性は、多くの場合ではそれほど高くありません。1年間に1%未満のことも多いです。3-4㎜未満の小さいものであれば、定期的なMRIなどで経過を見ていくことになります。
逆に1年間に1%以上となると、長期的には破裂してしまう確率は高くなるかもしれません。1年間に1%として、その後も同じ確率で変わらなかった場合、その後20年間にいつか動脈瘤が破裂してしまう可能性は、約18.2%となります。年間1%以上の動脈瘤は、部位にもよりますが、大きさが5-6㎜以上のものからです。お若い方で破裂していない動脈瘤が脳ドックで見つかった場合、大きなものであれば、くも膜下出血になる前に予防的に手術で動脈瘤をふさぐことを考えてもよい、ということになります。

くも膜下出血は働き盛りの年代に多い病気です。動脈瘤があるかどうかはMRIで診断が可能です。30代以降の方で、これまで一度もMRIを受けたことがないという方は、一度は脳ドックを受けておくことをお勧めします。また、血縁者にくも膜下出血を起こした方がおられる場合、脳動脈瘤ができる危険が高くなりますので、お若くても早めの脳ドック・定期的な脳ドックをお勧めします。

脳動脈瘤に対する手術方法

金属製のクリップで
脳動脈瘤の首を挟む “開頭手術” や、
コイルと呼ばれる柔らかく細い
白金(プラチナ)の糸を
脳動脈瘤の中にすき間なく埋める
“カテーテル治療” で、
脳動脈瘤をふさぐイメージ

動脈瘤の種類と特徴

症状を出す動脈瘤

冒頭で脳動脈瘤はあるだけで症状を出すことはあまりない、と書きましたが、例外として「片方のまぶたが下がる」という症状が出る方がおられます。動脈瘤の部位によっては、「動眼神経」というまぶたの動きを調節する神経を圧迫してしまい、この症状がでます。 動眼神経を圧迫するほどとなると、動脈瘤はある程度の大きさであるということも多く、破れてしまう確率も高くなります。 この場合は開頭手術やカテーテル治療で脳動脈瘤をふさいでしまうのがよいと考えます。治療をすれば、閉じたまぶたも開くようになることがほとんどです。 また、脳底動脈や椎骨動脈など、脳幹に近いところにある血管にできた脳動脈瘤も、大きくなってくると脳幹や脳神経を圧迫して、症状を出すことがあります。

解離性脳動脈瘤(かいりせいのうどうみゃくりゅう)

血管のコブとは違うタイプの動脈瘤です。血管の壁は3層構造になっていて、血管の裂け目が内側にできてしまい、層と層の間に血液が流れこみ、壁がはがれるようにしてできる動脈瘤のことを解離性動脈瘤といいます。
解離性脳動脈瘤のほとんどは、首の背骨を通って脳幹や小脳へ向かう“椎骨動脈”に発生することが8~9割とほとんどです。ですから、うなじや後頭部などに強い痛みが起きることになります。

解離性動脈瘤では、薄くなった外側の壁が破れて血液が外に出ると、くも膜下出血になります。血管の壁の間に血液が流れこむことで、血管の壁は膨らみますので、内側の正しい血液の通り道をふさいでしまうと、脳梗塞を起こすこともあります。