Sleep Apnea Syndrome

睡眠時無呼吸症候群

脳に関する診療内容を
ご紹介します。

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睡眠時無呼吸症候群について

「脳神経外科のクリニックで、なぜ睡眠時無呼吸症候群?」と首をかしげる方もおられるかもしれません。しかし、この病気は脳の健康・病気の予防や治療にも大きく結びついているのです。

睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に、呼吸が不十分になってしまうことや、数秒から2-3分など一時的に呼吸が止まってしまう状態になる病気です。その間、充分に酸素は吸えておらず、二酸化炭素を吐き出すこともできていません。その状態は体や脳にとって大きな負担・ストレスとなります。睡眠中のため自分では呼吸の状態が悪くなっていたとは意識できておらず、翌朝に目が覚めても覚えていないことがほとんどですが、このような睡眠は質が良いとはとても言えません。従って、日中に眠気を感じてしまうことや、眠ったのに疲れがとれない、などの症状が現れます。睡眠中は本来、体は休まってリラックスし、自律神経も副交感神経優位になるはずですが、睡眠時無呼吸症候群の方は睡眠中も交感神経を働かせてしまっています。いびき呼吸・無呼吸で酸素濃度が下がってくると、無意識下ですが苦しくなることでわずかに覚醒し、呼吸が再開して酸素濃度が持ち直す、ということを繰り返します。半覚醒することで、本来、夜間は休むべき交感神経も働かされてしまいます。そうすると、夜間も自律神経系の緊張状態が解けず、夜間高血圧の原因になってしまうことや、血糖値が上がりやすい状態になり、高血圧症・糖尿病といった生活習慣病にもよくありません。高血圧症・糖尿病の悪化は動脈硬化につながり、ひいては脳出血・脳梗塞などの脳卒中や心筋梗塞などの心臓病の原因になるのです。また、熟睡できていないことで、起床時や日中の頭痛の原因になることもあります。このように、睡眠時無呼吸症候群は脳卒中や頭痛など、脳神経外科クリニックとも関連があります。

睡眠時無呼吸症候群には中枢性と閉塞性があります。睡眠中の無意識な状態でも、呼吸を続けることができるのは、脳の中にある呼吸中枢が睡眠中でも息を吸う・吐くの指示を出してくれているからです。この呼吸中枢がなんらかの原因で障害されて、睡眠中の呼吸の指示がうまく出せなくなってしまうのが「中枢性睡眠時無呼吸症候群」です。「閉塞性」は口腔や鼻腔・咽頭・喉頭といった空気の通り道が何らかの原因で塞がりかけることで起きる睡眠時無呼吸症候群です。例えば、肥満はよくある原因の一つです。舌根という舌の奥の部分は睡眠の仰向けの状態では、下にある気道側に落ち込んできます。太り気味・太り過ぎの方は、首の回りに余分な脂肪がついてしまい、上気道が狭くなって気道がふさがりやすくなります。当院で診療可能なのはこの「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」です。

よくある症状

  • 日中の眠気や居眠り
  • 大きないびきをよくかく
  • 熟眠感がない
  • 集中力低下
  • 疲労感や倦怠感
  • 起床時などの頭痛
  • 寝汗
  • 夜間頻尿

検査方法と治療法

検査方法

睡眠中の呼吸の状態と、体の酸素の状態を測ります。当院で契約している機器メーカーさまからのレンタル機器をご自宅に郵送させていただき、ご自宅で検査機器を取り付けた状態で眠っていただくと検査が実施可能です。検査の機器は、呼吸を検出するための鼻の外側に装着する気流センサーのチューブと、血液中の酸素飽和度を測定するための指に付ける小型センサーがつながったものです。検査は予備日を含めて2晩分行ったのち、検査機器をメーカーさまに返送いただきます。データ解析に数日かかります。後日、当院にお越しいただき、結果の説明を受けていただくことになります。

治療方法

マウスピース治療:

軽症の場合は対象となることがあります。マウスピースを付けると下の顎が前へずらされる形になるので、その分、舌根が落ち込んでも気道が塞がりにくくなります。マウスピースは歯科での作成となりますが、当院は歯科も併設しておりますので、スムーズに相談が可能です。

耳鼻咽喉科への紹介:

鼻中隔湾曲や咽頭・喉頭の扁桃腺が大きくなり、気道をふさいでしまう場合があります。肥満がなくても睡眠時無呼吸になってしまった方は、こうした鼻やのどの奥の構造的な問題が原因のことがありますので、一度、耳鼻咽喉科の先生に診ていただくことも検討しましょう。場合によっては耳鼻咽喉科での処置や手術によって睡眠時無呼吸症候群が治療できることがあります。

CPAP治療(持続陽圧呼吸治療):

専用のマスクを鼻に被せた状態にして眠ります。マスクからは少し圧力がかかった空気が気道に送り込まれる仕組みになっています。気道に圧力が少しかかることで、舌根が落ち込んでも気道が塞がらなくなります。

中等症から重症の閉塞性無呼吸症候群の方がこの治療の対象となります。CPAP治療によって脳卒中や心筋梗塞などの危険が下がり、死亡率も低下するというデータや、日中の眠気による交通事故のリスクが下がったというデータが出ています。慣れない最初のうちはマスクをつけた状態や、圧力がかかった空気が送られてくることの不快感がでる方もおられますが、圧力を調整することや、マスクの種類を変えるなどの方法で徐々に慣れてきます。また、「肥満が一つの原因です。」とお伝えすると、「ダイエットを頑張ってみます。」と、言ってCPAP治療を保留にしたくなる患者さんもおられるかもしれません。しかし、前述のように、日中の眠気や疲労感・倦怠感がある状態では、なかなか思う様にダイエットや運動も進みにくいことがあります。また、肥満を解消するにも月単位である程度の時間が必要です。やはり、まずはCPAPを導入して睡眠の質を高めたうえで、ダイエットや運動を進めるほうが効率がよいでしょう。そして、適正体重を達成すればCPAPをお休みする、という方法をお勧めしています。

  • イラスト:帝人ヘルスケア株式会社さま提供