貧血といえば、めまいや立ちくらみのイメージが強いですが、実は頭痛も頻繁に見られる症状の一つです。
貧血による頭痛は、血液中のヘモグロビンが減少し、脳への酸素供給が不足することが主な原因とされています。
この記事では、貧血による頭痛の原因や生理との関係、市販薬の注意点などをわかりやすく解説します。食事から効率よく鉄分を摂取するポイントも紹介しているので、貧血予防や症状の改善にお役立てください。
貧血で頭痛が起きる主な原因は、血液中のヘモグロビン減少による脳内の酸素供給不足です(※1)。
酸素不足に対応するため、脳内では血流量を増やそうと血管の拡張が促されます。
拡張した脳血管が周囲の神経を刺激することで、拍動性の頭痛や頭重感が生じやすくなります。
近年の研究では、鉄欠乏性貧血が神経血管機能や神経伝達物質の異常を介し、片頭痛の発症に関与する可能性も指摘されています。(※2)。
(※1 参考)日本内科学会雑誌第104巻第7号|貧血の分類と診断の進め方
貧血による頭痛や吐き気などの症状が現れた場合は、速やかに安静に保ち、症状悪化を防ぐ対応が求められます。
初期対応のポイントは以下の3つです。
それぞれ詳しく解説していきます。
貧血による頭痛やめまいなどの症状が現れた際は、速やかに安全な体勢をとり、安静を保つことが重要です。
貧血で脳への酸素供給が低下すると、ふらつきや意識障害を生じることがあり、転倒による外傷のリスクが高まります。
まずは、しゃがむ・座る・横になるなど無理のない姿勢をとり、血圧や脳血流の急激な変動を抑えます。
安静時は呼吸を落ち着かせて酸素消費を抑制することで、症状の軽減や悪化防止につながります。
特に、ふらつきを感じた際は無理に動こうとせず、すぐに周囲の人に助けを求めることも大切です。
貧血による頭痛やめまいなどの症状がある場合、衣服の締め付けにも注意が必要です。
特に首回りや腹部の圧迫は、呼吸機能の低下や全身の血液循環を妨げ、酸素供給がさらに悪化する可能性があります。
ネクタイ、マフラー、ベルト、きついウエストゴムなどの衣類を緩めることで、不快症状の軽減や悪化防止が期待できます。
速やかに全身的な循環を促す対応は、転倒や失神などの二次的なリスクを防ぐことにもつながります。
脱水を伴う貧血時には、可能な範囲でこまめに水分補給を行うことが推奨されます。
脱水は血液の粘度を上げ、血流障害を引き起こすことで、頭痛やめまいなどの症状を悪化させる可能性があるためです。
水やスポーツドリンクなどを少量ずつ摂取し、体内の水分バランスを維持に努めましょう。
ただし、吐き気や嘔吐がある場合は、水分摂取が再度の嘔吐や誤嚥を招く恐れがあるため、無理に飲ませないよう注意が必要です。
なお、症状が持続または悪化する場合には、速やかに医療機関を受診してください。
貧血による主な症状は「全身の酸素不足に起因する症状」「身体の代償反応による症状」「赤血球不足による見た目の変化」の3つに分類されます。
以下に代表的な症状を分類ごとにまとめています。
分類 | 代表的な症状例 | 理由・特徴 |
酸素不足による症状 | ・倦怠感、疲労感・めまい、立ちくらみ・頭痛・耳鳴り・集中力低下 | 血液の酸素運搬力低下により全身の組織や脳の機能が低下するため。 |
代償作用による症状 | ・動悸・息切れ・頻脈・心雑音 | 酸素不足を補うために心拍数が増えるなど、循環血流量を補おうとする身体の反応。 |
外見的変化 | ・顔色不良(蒼白)・眼瞼結膜の蒼白・爪のさじ状変形(鉄欠乏性特有) | 赤血球減少や血色素の減少が皮膚・粘膜の色に現れる。 |
※1
急性の貧血では頭痛やめまいなどの自覚症状が出やすく、進行が緩やかな場合は無症状のまま経過することも少なくありません。
症状の程度や現れ方には個人差があり、健康診断で初めて判明するケースも多く見られます。
症状の有無にかかわらず、年に一度は検査を受け、必要に応じて早期に医療機関を受診することが大切です。
(※1 参考)日本臨床検査医学会|貧血
貧血の原因は数多くありますが、発症メカニズムは主に以下の3つに分類されます(※1)。
それぞれの仕組みと代表的な原因について詳しく解説していきます。
(※1 参考)MSD|貧血の病因
失血による貧血は、大量の血液喪失によって赤血球数が急激に減少し、全身の酸素供給が不足することで症状が現れます。
過多月経や腫瘍・癌などによる慢性出血が主な原因であり、疲労感や息切れ、顔色の蒼白などの症状が徐々に現れる傾向があります。
一方、手術や血管破裂などによる急性失血では、貧血の進行が速いため、重症度にかかわらず症状が強く現れやすいのが特徴です。
失血が疑われる場合は、便や尿の検査、画像診断で出血部位の特定が重要で、原因除去や必要に応じて輸血・鉄剤補充が行われます。
体内の赤血球が十分に作られないことも貧血の原因の一つです。
赤血球の材料不足による貧血の代表的なタイプは、鉄欠乏性貧血と巨赤芽球性貧血です。以下にそれぞれの特徴をまとめています。
材料不足による貧血 | 不足する栄養素 | 主な原因の一例 |
鉄欠乏性貧血 | 鉄分 | ・偏食・無理なダイエット・妊娠・授乳期の需要増加 |
巨赤芽球性貧血 | ビタミンB12、葉酸 | ・菜食主義・自己免疫疾患・吸収障害・アルコール依存 |
赤血球の生成には鉄、ビタミンB12、葉酸の3つ栄養素に加え、赤血球の生産を促すホルモンバランスも重要です。
これらの必須要素が不足すると赤血球の数や質が低下し、全身への酸素供給能力が低下します。
貧血の種類によって治療法は異なるため、医療機関での的確な診断と原因の特定が不可欠です。
赤血球が十分に作られないことで起こる造血障害性貧血は、単なる栄養不足とは異なり、基礎疾患の関与が深いのが特徴です。
以下は造血機能の低下が関与する主な疾患とその特徴です。
これらのタイプの貧血は鉄剤の補充では改善が期待できず、医療機関で病態に応じた専門的な治療が必要です。
また、心不全や慢性腎臓病などの慢性疾患でも、炎症や代謝異常により骨髄の造血が抑制されることもあります。
造血障害による貧血の診断には、骨髄検査や血液学的評価が重要であり、専門医との連携が不可欠です。
月経による出血は、女性にとって大きな鉄損失の大きな要因です。
特に月経過多や出血期間が長い場合は、体内の蓄積鉄が枯渇しやすく、鉄欠乏性貧血を引き起こすリスクが高まります。
生理周期におけるエストロゲン変動も頭痛を誘発する要因となり、鉄欠乏との相乗効果で症状が強まることがあります。
海外の研究では、月経性片頭痛を訴える女性の多くに鉄欠乏性貧血が認められ、鉄状態の改善が症状緩和につながる可能性も報告されています(※1)。
貧血の予防・改善には、鉄分を豊富に含む食材を継続的に取り入れることが基本です。
以下の食材は鉄の供給源として優れています。
これらの食品から効率よく鉄分を補給するためには、「吸収を助ける栄養素」や「吸収を妨げる成分」への理解も重要です。次の見出しで詳しく解説していきます。
鉄分の中でも、植物性食品などに含まれる非ヘム鉄は吸収率が低いため、吸収を助ける栄養素と一緒に摂取することが大切です。
非ヘム鉄の吸収を助ける栄養素 | 食材例 | 主な働き |
ビタミンC | ・ブロッコリー・ピーマン・キウイ・アセロラ | 鉄を吸収しやすい還元型に変え、吸収率を高める。 |
たんぱく質 | ・納豆・木綿豆腐・鶏卵 | 胃酸の分泌を促進し鉄の吸収を助ける。 |
クエン酸 | ・レモン・梅干し・ドライトマト | 鉄の溶解性を高めて腸からの吸収を向上させる。 |
※1
非ヘム鉄は単独では吸収されにくい栄養素ですが、サポート成分と一緒に摂ることで効果を発揮します。
バランスよく食材を選び、毎日の食事で効率よく鉄分を取り入れましょう。
(※1 参考)文部科学省|食品成分データベース
赤血球の生成には、鉄分だけでなく造血作用を持つ栄養素の十分な摂取も不可欠です。
ビタミンB12と葉酸は、赤血球の成熟やDNA合成に関与する重要な栄養素です。鉄と合わせて以下の食材を意識して取り入れましょう。
造血作用を持つ栄養素 | 食材例 | 主な働き |
ビタミンB12 | ・レバー・貝類(しじみ、あさり)・鶏卵 | 正常な赤血球形成や神経修復をサポートする。 |
葉酸 | ・のり・ブロッコリー・枝豆 | 赤血球の前駆細胞である造血細胞の成熟・分裂を促進する。 |
※1
月経や妊娠・出産期は、鉄だけでなくビタミンB12や葉酸の必要量も増加し、不足すると貧血や神経障害のリスクが高まります。
特に鉄の損失が多い女性は、鉄・ビタミンB12・葉酸の3つの栄養素を意識的に摂取することが推奨されます。
(※1 参考)文部科学省|食品成分データベース
鉄分の吸収は、同時に摂取する食品の成分によって妨げられることがあります。
以下の成分を含む食品は、鉄と結合して吸収を妨げたり、腸管での取り込みを阻害する可能性があるため注意が必要です(※1)。
鉄分を含む食事をする際は、できるだけこれらの食品は避けるのが理想的です。
難しい場合は、食事の前後1〜2時間をあけて摂取することで、鉄の吸収への影響を最小限に抑えられます。
(※1 参考)厚生労働省|微量ミネラル ①鉄(Fe)
市販の鎮痛薬は一時的な頭痛の緩和に有効ですが、貧血のある方は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用に十分な注意が必要です。
ロキソニンやバファリンなどのNSAIDsは、血液成分の異常(貧血、白血球減少、血小板減少など)を悪化させるリスクがあります(※1)。
また、消化管粘膜障害や潰瘍を引き起こしやすく、消化管出血により貧血症状がさらに悪化する可能性もあります。
貧血の既往がある方や、血液異常が疑われる場合は、必ず医師の指導のもとで使用してください。
(※1 参考)PMDA|ロキソニン錠60mg/ロキソニン細粒10%
貧血による頭痛についてよくある質問をまとめました。
市販の鎮痛薬は一時的な頭痛の緩和に有効ですが、根本的な原因を改善するものではありません。
一部の鎮痛薬には、血液に影響を及ぼす成分を含む薬剤も存在します。貧血の診断を受けている場合は、必ず医師の指導のもとで使用してください。
一般的に、ヘモグロビン値が7 g/dL以下になると、頭痛や倦怠感などの症状が現れやすくなります。
ただし、貧血による症状の現れ方には個人差があり、低い数値でも無症状の方もいれば、早期に不調を自覚する方もいます。
貧血による頭痛は、頭全体が重く締めつけられるような感覚や、ズキズキとした拍動性の痛みが現れるのが特徴です。
また、酸素不足により、頭痛と同時にめまいや倦怠感などの全身症状を伴うことも少なくありません
貧血による頭痛は、脳の酸素供給不足や神経・血管の異常反応など、複数の要因が重なって発生します。
女性の場合、月経周期に合わせて頭痛が起きる傾向があれば、鉄欠乏性貧血の可能性も考えられます。
頻繁な頭痛が続く方は、貧血の有無にかかわらず医療機関で検査を受けることで、適切な治療による改善が期待できます。
当院では、頭痛の発生パターンや生活習慣を丁寧に伺い、脳神経外科の視点から神経症状に適した治療をご提案しています。
「頭痛で仕事や学業に支障が出ている」
「頭痛の頻度が増えた」
「鎮痛薬が手放せない」など
頭痛は周囲の理解が得られないことも少なくありません。お困りの症状がある方は、一人で悩まず当院へご相談ください。
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