Ohisama Note

おひさまノート

矯正歯科 2025.10.03

マウスピース矯正は一日に何時間装着しないといけないの?適切な装着時間をご紹介!

目次

マウスピース矯正の1日の適切な装着時間について

マウスピース矯正の成功の鍵は正しい装着時間の管理にあります。一般的に推奨されている1日の装着時間がありますが、なぜその時間が必要なのでしょうか?

本記事では、最適な装着時間、段階別の時間管理、装着時間を守るポイントまで、治療効果を最大化するための矯正器具の装着について詳しく解説します。

マウスピース矯正治療とその後について

マウスピース矯正は、取り外し可能なマウスピースを使った矯正治療の1つです。
マウスピースは「アライナー」とも言われ、透明なプラスチック製の審美性に優れた矯正装置とされています。

コンピューター上で3Dシミュレーションを行い、理想の歯並びにするためのマウスピースを作成します。約1週間毎に決められた新しいマウスピースに取り替え、歯を段階的に動かします。

また、マウスピースによる矯正が終了して数年間は「保定期間」として、新たな歯科的なアプローチが必要になります。保定期間についてもご紹介します。

保定期間について

マウスピース矯正終了後の保定期間中のリテーナーについて

リテーナーとは矯正治療後に使用する “保定装置” です。矯正治療で整えた歯並びが元の位置に戻ろうとして起こる「後戻り」を防止するために使用します。

怪我をしても “かさぶた” ができて最終的に元の状態に戻るのと同じように、矯正治療も物理的に力を加えて理想の歯並びになったとしても、矯正終了後すぐは歯の周りの組織は安定していないため、そのままの状態にしておくと元の状態に戻ろうと「後戻り」してしまいます。

* リテーナーの種類

リテーナーは、取り外し可能なマウスピース型やプレート型、歯の裏に接着剤で金属線を固定するフィックス型などがあります。

* 可撤式リテーナーの装着時間

  • 矯正終了直後は状態が安定していないため、マウスピースの装着時間と同様に、20時間以上(食事や歯磨き以外の時間)の装着が推奨されています。
  • 歯や周囲組織の状態などから、歯科医師による総合的な判断に従って、装着時間を段階的に短縮していきます。
  • 自己判断で保定を中断せず、問題がある場合はすぐに歯科医院に相談しましょう。

適切なマウスピース矯正の装着時間の基本

推奨されている装着時間:20時間以上 

1日24時間のうち、食事や歯磨きの時間を除くほぼ全ての時間がマウスピースの装着時間に該当します。

なぜ長時間の装着が必要なのか?

マウスピース矯正を長時間装着しなければ治療効果が得られない理由は、適切な矯正力で歯の移動を実現するためです。「マウスピース矯正による歯の移動の仕組み」について知ることで、より理解を深めましょう。

1.歯の構造について知ろう!

 ✓  歯は部位によって名前が決まっています。

  ・「歯冠」:口の中に露出しており、普段見えている部分
  ・「歯根」:歯茎の下に埋まっていて見えない部分

 ✓  歯は、エナメル質・象牙質・セメント質といった硬い組織で構成されています。
   最も内側に歯髄(神経や血管、リンパ管などを含む)が存在しています。

 ✓  歯科用語の中に “歯周組織” と呼ばれる、歯を支える組織があります。


★ 歯周組織 =「歯肉」+「セメント質」+「歯根膜」+「歯槽骨」
歯の縦の断面(構成要素の説明図)
  • 「歯肉」: 
    「歯茎」と呼ばれる歯槽骨を覆う軟組織
  • 「セメント質」:
    コラーゲン線維が含まれ、歯根を歯槽骨に固定したり、刺激から神経を守ったりする
  • 「歯根膜」:
    「歯周靱帯」とも呼ばれ、歯槽骨と歯を結びつける。血管や細胞などを豊富に含む軟組織で、衝撃を抑えるクッションの役割もある
  • 「歯槽骨」:
    歯根が埋まっている顎の骨のことで、歯を支えている

2.矯正治療でどうやって歯が動くの…?

歯の移動には、「歯根膜」と「歯槽骨」が大きく関わっています。

歯に適切な矯正力が加わると、歯根膜は位置によって以下の2つの状態に変化します。

 ① 歯が歯槽骨側に押し付けられて圧迫された「圧迫側」

 ② 歯に引っ張られて拡大した「牽引側」


「圧迫側」では、何が起こってるの?

→ もともと血管や細胞が存在している軟らかい歯根膜は、矯正力が加わった歯に押されて圧迫され、貧血状態になります。貧血状態が深刻な部位では、栄養が十分に行き渡らなくなったり細胞が死んだりします。貧血状態が軽度の部位では、「破骨細胞」という骨を溶かす細胞が集合し、貧血状態の歯根膜に接する歯槽骨を溶かします。

→ 歯槽骨が溶けた分、外側に骨が新しく形成されるため、歯根膜も歯槽骨も厚みは一定に保たれます。


「牽引側」では、何が起こってるの?

→ 圧迫側と逆で、歯が動いて拡大した歯根膜は血流・代謝が良くなり、骨を作る「骨芽細胞」や石灰化を促進する細胞などが増加します。そして、歯槽骨が新しく形成されます。

→ 歯槽骨が形成された分、外側の骨は溶かされて、歯根膜も歯槽骨も厚みは一定に保たれます。

このような「圧迫側」と「牽引側」の2つの状態が発生すると、歯槽骨の改造が行われると共に、歯が移動します。

3.マウスピース矯正を長時間着用する必要性

指で押し・噛むなどの「一時的な力」が歯根膜に加わった場合は、もとの状態に戻ります。

一方、矯正治療による適切な「持続的な力」を歯に加え続けることで、上記で説明したような「圧迫側」と「牽引側」の2つの状態が生まれ繰り返すことで、歯を移動させています。

マウスピース矯正は取り外し可能な矯正治療であるため、着用している時しか歯に力を加えることができません。そのため、矯正力を「一時的な力」ではなく「持続的な力」として働かせるためには長時間の着用が必須になります。

適切な装着時間を守らなかったら…

適切な1日の装着時間を満たさない場合に起こり得ること

✓  矯正治療の効果が減少

マウスピース矯正で使用するアライナーは、「1日20時間以上装着し、約1週間毎に交換する」という前提のもと、コンピューター上で精密に計画されて作製されています。そのため、マウスピースを装着する時間が不足すると、予測された治療効果を得られない事態に陥ります。

✓  治療期間の延長・治療費の増加

マウスピース矯正の装着時間が不足して治療効果が十分に得られなかった場合、直ちに歯科医師によって治療計画を変更する必要があります。そのため、治療期間が伸びることが予想されます。また、治療期間が延びることで、新しく作り直すための矯正装置代や再診料、といった追加の治療費が掛かります。

マウスピース矯正の装着中の注意点

マウスピース矯正の洗浄について

洗浄

マウスピース・リテーナーはいずれも、長時間お口の中に入れるため清潔な状態を保たなくてはなりません。専用の洗浄剤や軟らかい歯ブラシなどを活用して洗浄しましょう。

※歯磨き粉は研磨剤が含まれていることがあり、装置を傷つける可能性があるため、装置の洗浄には使用しないようにしましょう。

睡眠時の装着

基本的に、寝るときもマウスピース矯正を装着してください。

必ず、歯磨きやフロスなどで口腔内を清掃し、マウスピースも洗浄剤等で清潔な状態にしてから着用するようにしましょう。

まとめ(結論)

マウスピース矯正は、現代のAI技術を駆使した非常に有効な歯科矯正治療の1つです。マウスピース矯正の装着時間を適切に管理することで、予定通りの期間で理想の歯並びに近づける可能性が高くなります。

矯正治療が完了しても「後戻り」の可能性があり、リテーナーの活用もご理解いただく必要があります。歯科医師の指示に従い、丁寧な積み重ねを継続することで、美しい歯並びにつながります。

おひさま歯科はマウスピース矯正を含め、患者様の症状に応じた矯正治療を提供しております。歯並びでお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。