Ohisama Note

おひさまノート

歯について 2025.08.13

マウスピース矯正と虫歯の関係性

目次

マウスピース矯正と虫歯の関係性

マウスピース矯正について

マウスピース矯正は美しい歯並びを実現する優れた治療法です。しかし、適切な管理を怠ると虫歯が発生するリスクがあります。

美しい歯並びを手に入れるためには、治療前に患者様ご本人に虫歯のリスクや口腔衛生管理の重要性を段階的なご理解をしていただくことが必要不可欠です。

この記事では、マウスピース矯正と虫歯の関係性について詳しく説明しています。マウスピース矯正と虫歯の関係性について段階的に理解し、適切な管理を行いましょう。

そもそもマウスピース矯正ってどんな治療?

マウスピース矯正について

マウスピース矯正は、歯列全体を覆う薄く透明な合成樹脂系素材の矯正装置(アライナー)を用いた歯列矯正治療です。固定式矯正装置であるワイヤー矯正とは異なる特徴を持ちます。


マウスピース矯正の特徴

  • 透明で目立ちにくい審美性
  • 食事や歯磨き時に取り外し可能で清掃性が良い
  • 金属アレルギーの心配がない
  • 1日20〜22時間の装着が必要
  • 3Dシミュレーションによって歯の移動を計画できる



マウスピース矯正の基本的な仕組み

 

患者様の歯型をもとに3Dシミュレーションで歯の移動を計画し、
段階的に形状の異なる複数のアライナーを製作します。

通常1〜2週間ごとに新しいアライナーに交換することで、
徐々に理想的な歯並びへと導きます。


不正咬合と虫歯の関係性

不正咬合と虫歯の関係性について

不正咬合と虫歯は表裏一体で、相互に増悪作用を持ちます。

不正咬合とは…
顎や顔面、歯の形態的・機能的異常により正常な咬合の範囲から逸脱した状態の事です。



不正咬合が虫歯リスクを高める理由

口腔清掃が困難:叢生(歯が前後に重なりデコボコした歯並び)や歯の隙間の異常があると、
歯ブラシやデンタルフロスが届きにくく、プラーク(歯垢)が蓄積しやすく
なります。
食物残渣の停滞:不正咬合によって咬み合わせが悪い部分では、食べ物のカスが停滞しやすく、
細菌の栄養源となってしまいます。これにより虫歯の原因菌の増殖を促進します。
唾液の循環不良:歯並びが悪いと唾液の自然な流れが阻害され、口腔内の自浄作用が低下します。
唾液には虫歯を抑制する働きがあるため、虫歯リスクを高めます。




虫歯が不正咬合を促進させる理由

歯の接触状態の変化:虫歯により歯質の欠損や歯の喪失が起こると、隣り合う歯や向かい合う
歯との接触関係が変化し、歯並びを乱す可能性があります。



虫歯がある状態でのマウスピース矯正は可能?

虫歯がある場合の矯正治療の可否について

基本的に、矯正治療を行う前に虫歯を治療する必要があります。

以下の場合治療方針が変則的になることがあります。

  • 虫歯が矯正歯科治療の抜去対象になる場合
  • 初期う蝕の場合(→”虫歯の進行度合いによる対応の違い”で詳しく説明しています)
  • IPR(ディスキング)をする場合
  • 精密な噛み合わせ治療をする場合。矯正治療後に虫歯治療を行う場合があります。

 ※IPR(ディスキング):やすりのような器具を歯と歯の間に挿入して、歯の横幅を少量切削すること

矯正前に虫歯の治療が必要な理由

矯正治療前の虫歯治療について

マウスピース矯正を開始する前に虫歯治療を完了することには、重要な理由があります。

  • 確実な治療効果を得るため
    :虫歯による痛みや歯の損傷が、装置の装着に支障をきたし、計画通りの歯の移動が困難になります。
  • 治療中断・延長のリスク回避
    :矯正治療中に虫歯が悪化すると、急な治療が必要となり、矯正治療の中断を余儀なくされる場合があります。
  • アライナー適合性の確保
    :矯正治療中の虫歯治療によって歯の形が変わると、既製のアライナーが適合しなくなる可能性があります。

虫歯の進行度合いによる対応の違い


虫歯の進行度は、C0〜C4の5段階に分類されます。この進行度によって対応が異なります。



【矯正治療を行える可能性がある虫歯】


C0(初期虫歯:まだ穴が開いていない、エナメル質の脱灰が始まった状態)

虫歯の進行状態(C0:初期虫歯)

【症状】自覚症状(痛みなど)はない
【治療】フッ素塗布や食生活改善

  • 歯は削らず、予防的処置の強化と経過観察を行います。
  • 並行して矯正治療が可能な場合があります。


【矯正治療前に治療を行うべき虫歯】

C1(エナメル質の虫歯:エナメル質に小さな穴が開いた状態

虫歯の進行状態(C1:エナメル質の虫歯)

【症状】痛みを感じることは少ない
【治療】フッ素塗布+小さな詰め物で歯を保護

  • 矯正開始前または初期に虫歯治療を行います。

C2(象牙質の虫歯)

虫歯の進行状態(C2:象牙質の虫歯)

【症状】しみる症状が出現
【治療】詰め物による保存的な修復

  • 矯正開始前の虫歯治療を強く推奨
  • 併せてフッ素塗布などの予防的処置の強化も行う

C3(神経に達する虫歯)

虫歯の進行状態(C3:神経に達する虫歯)

【症状】激しい痛みを伴う場合が多い
【治療】根管治療(神経の治療)が必要

  • 矯正開始前の確実な治療が必須
  • 十分な経過観察期間を設ける

C4(歯根のみ残存:歯冠部分が大きく破壊された状態

虫歯の進行状態(C4:歯根のみ残存)

【症状】全身症状(発熱など)が出る場合がある
【治療】抜歯や大規模な修復治療が必要

  • 矯正計画への大きな影響を考慮
  • 治療計画の根本的な変更が必要な場合も

(引用元:https://www.shika-sozai.com/illust75/index.html


マウスピース矯正中に虫歯になる原因と対処法

矯正治療中に適切な管理を怠ると虫歯が発生する可能性があります。虫歯を発症した場合、修復処置のために矯正を中断したり、場合によっては中止せざるを得ないこともあります。
したがって、マウスピース矯正中は、通常とは異なる口腔環境となるため、どのような変化や虫歯の原因があるのかを理解して適切に対応することが重要です。

マウスピース矯正による口腔環境の変化

マウスピース装着による口腔環境の変化

1.唾液の変化

唾液には様々な役割があります。

唾液の役割

矯正器具装着中の異物感や器具による影響で
以下のような唾液の変化が見られます。

  • 唾液分泌量の変化
  • 唾液の循環パターンの変化

2.清掃不足による細菌量の増加

マウスピース矯正中は、清掃不足により細菌量が増加しやすい環境となります。

  • 食事後の不適切な管理 
    :矯正装着前の歯磨きが不十分だと、汚れと一緒にアライナーを装着することになり、虫歯菌が繁殖しやすい環境を作ってしまいます。
  • アライナーの清掃不足
    :アライナー自体の清掃を怠ると、細菌が付着し続け、装着時に口腔内に細菌を運び込むことになります。

矯正中の虫歯予防法

矯正中の虫歯予防(口腔ケア)

マウスピース矯正中の虫歯予防には、従来の口腔ケアに加えて特別な配慮が必要です。

アライナーの清掃

  • 専用クリーナーまたは中性洗剤での清拭
  • 定期的な歯科医院での超音波洗浄
  • 清潔な保管ケースの使用

食事管理

  • 食事・間食のタイミングを決める
  • 過剰な糖分や酸性飲料の摂取を避ける

早期発見・治療のために定期的な歯科医院への検診

フッ化物の応用

  • 小児時期から継続すると非常に効果的
  • 抗菌作用・抗齲蝕作用、虫歯の原因菌が産生する酵素の働きを抑制する働きをもつ
  • フッ素配合歯磨き粉の使用

生活習慣の改善

  • 十分な睡眠で免疫力を保持
  • ストレス管理
  • 禁煙・節酒

まとめ(結論)

マウスピース矯正は適切な管理により、虫歯リスクを抑えながら理想的な歯並びを実現できる優れた治療法です。歯科医師と密に連携し、個人の状況に応じたケア方法を実践することで、安全で効果的な治療を受けることができます。

マウスピース矯正による歯並びの改善は、将来的・長期的な虫歯予防に大きく貢献すると予想されます。美しい歯並びと健康な歯は、生涯にわたってあなたの笑顔を支える大切な財産です。正しい知識と継続的なケアにより、理想的な口腔環境を維持していきましょう。

おひさま歯科はいつでも患者様をお待ちしております。