
矯正治療によって歯並びを整えながら、同時に歯を理想の白さに近づけることができれば、より美しい口元を効率的に手に入れられるかも知れません。その一つの方法として、果たしてマウスピース矯正とホワイトニングのコンビネーションは現実的に可能なのか、一緒に考えていきましょう。
そもそもホワイトニングとはなんでしょうか?
「歯の内部に作用して歯そのものの色を薬剤で化学的に白くすること」とされています。一般的な表現として「漂白」というと、イメージがつきやすいかも知れません。
ホワイトニングは大きく4つの種類があります。それぞれ使用する薬剤や方法、メリットデメリットが異なります。

【実施場所】歯科医院
【使用薬剤】濃度35%の過酸化水素
【メリット】
【デメリット】

【実施場所】自宅
【使用薬剤】濃度10%程度の過酸化尿素(患者様自身での管理が必要なため、歯科医院で使用するオフィスホワイトニング剤より低濃度のものが処方されます。)
【実施方法】
歯科医院で自分の歯に合ったホワイトニング用のトレーを作製する
▶︎自宅にて、歯科医院での指導通りに薬剤をトレーに入れて歯に装着する
▶︎1日2~4時間(薬剤によって異なる)、10~20回継続的に実施
▶︎徐々に歯の白さを実感し始める(個人差あり)
【メリット】
【デメリット】
【注意点】
【実施場所】歯科医院+自宅
【実施内容】オフィスホワイトニングとホームホワイトイングを並行して実施する方法
【メリット】それぞれ2つの方法で発生するデメリットを補いながら、より白さや持続性といった高い効果を期待できる方法です。
【実施場所】ホワイトニングサロン、自宅など
【使用薬剤】歯の表面を白くする化粧品や歯磨き粉など(重層・メタリン酸・ポリリン酸・炭酸カルシウムなどの成分配合)
※「過酸化水素・過酸化尿素」が配合された薬剤を使用して行うホワイトニングは歯科医師・歯科衛生士にのみ認められています。
【実施内容】歯科医師による口腔内診査やホワイトニング方法の指導を受けずに、サロンのスタッフの指示に従って患者様ご自身で実施する方法
【注意点】

よく勘違いされやすいのは、「ホワイトニング」と「クリーニング」との違いについてです。どちらも歯を白くするためには必要不可欠な施術ですので、違いをしっかり理解しておきましょう。
「ホワイトニング」とは、歯を削ることなく、ホワイトニング剤を歯の内部に作用させて歯そのものの色を化学的に白くブリーチすることです。歯石・ステインはホワイトニング剤で除去できません。また、病気を治療するために行う施術では無いため保険適用外の扱いになります。
「クリーニング」とは、あくまで歯の表面に付着した汚れ、歯石、プラークを専用器具で機械的に除去することです。
健康な歯本来の色を取り戻す事は出来ても、歯を根本的に白くする事が目的に行われる施術ではありません。
※ただし、タバコのヤニが原因で着色した歯に対しては、「重炭酸ナトリウム」と言う特殊パウダーを歯に吹き付けるクリーニングにより着色除去を行うことが可能です。
★このように全く異なる2つの施術ですが、ホワイトニングを実施する前には必ずクリーニングを行って口腔内の状態を整える必要があります。

ホワイトニングは歯の内部に作用して化学的に白くする「漂白」作用ですが、具体的にどのような作用機序で歯を白くしているのでしょうか?
⦅歯の着色の原因⦆
エナメル質の表面の凹凸に沈着した有機性の着色物質
⦅オフィスホワイトニングの仕組み⦆
オフィスホワイトニング剤の主成分「過酸化水素」が光・熱により分解される
▶︎化学的に不安定なフリーラジカルを発生する
▶︎エナメル質中の着色物質を分解して着色のスック内物質に変化させる
⦅ホームホワイトニングの仕組み⦆
ホームホワイトニング剤の主成分「過酸化尿素」が唾液・体温によって分解される
▶︎2/3の過酸化尿素は尿素になり、唾液侵入のバリアになる
▶︎1/3の過酸化尿素は過酸化水素になり、さらに一部が酸性の弱いフリーラジカルに、一部がアルカリ性の強いフリーラジカル(ペルヒドロキシラジカル)になる
▶︎アルカリ性の強いフリーラジカルが着色・変色の原因物質(不飽和二重結合)のみ作用して飽和化する。これにより、歯質には影響を与えずに漂白作用を実施することが可能である。

結論から言うと、基本的にマウスピース矯正とホワイトニングの併用は可能です!
しかし、ホワイトニングの適用自体に禁忌症があったり、矯正の内容によってホワイトニングを実施するタイミングをずらす必要があったりと、満たすべき条件が存在する場合があります。それではホワイトニングについてより詳しく見ていきましょう。

前述した通り、ホワイトニングを行うにあたって適応症・非適応症があります。
その中でも、知覚過敏の方はホワイトニングを実施する際に、より注意して薬剤を選択する必要があります。
ホームホワイトニングの場合、トレーニング薬剤を塗布して装着する時間は各薬液で定められており、それ以上の装着を行うと歯がしみたり違和感を感じたりする可能性があります。また、規定以上装着を行なっても漂白作用が促進してより歯が白くなるというような影響はないため、規定時間を守る必要があります。
一方で、マウスピース矯正はアライナーの装着時間が1日20時間以上とされています。そのため、ホワイトニングと矯正を同時並行する場合には、薬剤の塗布や除去、口腔内清掃をこまめに管理しながら進める必要があります。そのため、患者様の正しい理解と管理するモチベーションが必要になってきます。
ホームホワイトニングの場合、歯が白くなってきたと実感するまでに最低でも数週間はかかるとされています。一方で、オフィスホワイトニングは歯科医院でより高い濃度の薬剤と専用器具を用いて実施することから1回でも白さを実感することができます。
ホワイトニングの種類によって、多少の効果を実感するまでの期間に差があるとはいえ、数年かかる矯正治療と比較すると、ホワイトニングは結果が短期間で得られると言ってもいいでしょう。
そのため、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを併用したデュアルホワイトニングを行いながら、着実にまた効率的に歯の白さを実感しながらも矯正治療を続けることで、高いモチベーションを保ちながら治療を続けることができるでしょう。

マウスピース矯正で歯並びを整えながら、同時にホワイトニングで歯の白さを手に入れることができれば、短時間に治療を終えることができ、美しい口元を実現することができます。更に、歯並びが綺麗になったり、歯が白くなったりと、視覚的に治療効果を実感すればするほど患者様の治療へのモチベーションが向上する傾向があります。
ホームホワイトニングやデュアルホワイトニングの場合、歯科医院で一度患者様の歯型を型どりしてホワイトニング専用のトレーを作製する必要があります。しかし、マウスピース矯正治療と同時にホワイトニングを行う場合は、すでにお持ちの矯正用のアライナーをホワイトニングのトレーとしても活用することができます。
同時進行できるケースとして、「叢生がないケース」があげられます。そのため基本的にはマウスピース矯正が終了した時点で行う事をお勧めします。

虫歯や歯周病、歯ぎしりや食いしばりで発生しやすいクラック(歯のひび割れ)といった状態が口腔内で確認された場合は、ホワイトニングや矯正治療より先に歯の治療を行う必要があります。
ホワイトニング薬剤は歯の表面の保護膜を剥がし、歯の内部に浸透して漂白作用を発揮します。結果として、歯の神経に刺激が伝わりやすくなり、一時的な知覚過敏を引き起こす可能性が高いためです。
目立った口腔内の問題がなくても、歯が痛んだりしみたりする「知覚過敏」を発症することがあります。この場合、ホワイトニングの実施時間の短縮、または1、2日間の停止と共に、以下のような解決方法があります。
従来のホワイトニング剤と比較して低刺激で、歯の表面をコーティングしながらもホワイトニング作用も発揮します。
歯の再石灰化を促進して、歯の表面を強化します。
マウスピース矯正では、歯を効率的に動かすための固定源として「アタッチメント」を活用することがあります。
「アタッチメント」とは歯の表面に直接接着させた小さい樹脂製の突起物の事で、マウスピース矯正の密着度を高めたり、複雑で微細な歯の移動を実現したりします。治療後は除去します。
このようなアタッチメントが歯に付与された状態でホワイトニングを行うと、アタッチメント部分ではホワイトニング効果が発揮されずに色ムラが生じる可能性があります。そのため、アタッチメントを活用した矯正治療の場合は、ホワイトニングを同時進行することをお勧めしません。

ホワイトニングを実施している期間中であっても、矯正用のマウスピースは規定通り1日20時間以上装着していただく必要があります。ホームホワイトニングを行う場合は薬剤の使用方法や時間、装置の洗浄等の自己管理が必須です。ホワイトニングを理由に装着時間が短くなると以下のような問題が生じます。

歯の色の基準を「シェード」と言い、一般的に歯の白さはシェードの見本を並べた「シェードガイド」や専用の測定器等を用いて評価します。
歯の種類や人によって歯の白さは異なります。
最も白い傾向が高い歯は「下顎の真ん中の前歯」で、色が濃い傾向が高い歯歯「上下の犬歯」とされています。また、人種・年齢・生活習慣・飲食物の嗜好等、様々な条件に応じて変化するため、ホワイトニングの効果にも個人差が生まれます。欧米人の平均的なシェードはA2〜2.5である一方で、黄色人種である日本人の平均的なシェードはA3〜3.5と、白さに差があります。この理由として、エナメル質の厚さが挙げられます。半透明で白色に見えるエナメル質の下には黄色味が強い象牙質が存在し、このエナメル質が厚い欧米人の方が歯が白く見える傾向にあるのです。
歯の白くなりやすさには個人差がありますが、一般的に即効性が高いとされるオフィスホワイトニングでは一回の施術でもシェードガイドで2〜4トーン程度の改善が見込める場合があります。しかしながら即効性が高い分、後戻りも早く、効果持続期間は3〜6か月程と言われています。一方、ホームホワイトニングは歯の白さを実感するのに数週間はかかりますが、効果持続期間は6〜12か月程度、デュアルホワイトニングでは更に12〜24か月程度とされています。
ホワイトニングで得られた効果は永久ではないため、定期的にメンテナンスやホワイトニングを実施することが歯の白さを保つポイントと言えます。
ホワイトニングで効果が得られた後は、「タッチアップ」という段階に入ります。後戻りが気になり始めたタイミングで再度ホワイトニングを実施して白さを回復させます。タッチアップの目安は前回のオフィスホワイトニングから6〜12か月程度とされています。ホームホワイトニングのタッチアップ方法は、後戻りが気になり始めた頃から集中的に1週間程ホワイトニングを再開するなどがあります。

ホワイトニング後の歯は非常に敏感な状態です。
通常、エナメル質は唾液由来のタンパク質の薄膜である「ペリクル」に覆われて守られていますが、ホワイトニングによってこの「ペリクル」が剝がされて一時的にエナメル質が露出してしまいます。
特にオフィスホワイトニングでは濃度が高い薬剤を使用しているため、再着色に注意が必要です。
ホワイトニング後、以下のような「着色しやすい飲食物・うがい薬」は控えるようにしましょう。
更に、「タバコ」にも気を付ける必要があります。特にオフィスホワイトニングを受けた24〜48時間は禁煙を強く推奨します。タバコに含まれるタールは粘着性があり、歯や歯周組織のみならず全身の健康にも悪影響を与えます。

マウスピース矯正とホワイトニングの併用は可能ですが、ホワイトニングのタイミングは矯正終了後が基本といえるでしょう。矯正治療だけでも歯並びは改善しますが、ホワイトニングを加えることで、笑顔の印象も変化するでしょう。結婚式や就職活動など、大切なイベントに向けて準備している方には、おすすめの組み合わせです。
併用する際は、知覚過敏や、タイミングなどのリスクについても理解しておく必要があります。適切な管理のもとで行えば、これらのリスクは最小限に抑えられます。不安な点は担当歯科医師に相談し、あなたに合った方法を選びましょう。
歯並びと白さ、両方が揃った美しい笑顔をおひさま歯科では応援しています。マウスピース矯正やホワイトニングをはじめとして、患者様のお口に関するお悩みに寄り添った診療を行っております。どうぞお気軽にご相談ください。