Ohisama Note

おひさまノート

矯正歯科 2026.01.29

マウスピース矯正治療の前に、親知らずは抜かないといけないの?

目次

矯正歯科治療

マウスピース矯正を行う上で患者様がに疑問を抱きやすいことの一つに「親知らずを抜歯しないといけないのか?」という内容が挙げられます。「矯正をして歯並びを美しく整えたいけれど、抜歯をするのは抵抗がある。」と少し後ろ向きの考えを持たれている患者様もいらっしゃいます。

本記事では、矯正を行うに際して親知らずの抜歯は必ず必要なのかどうか、わかりやすくご説明しております。

親知らず(第三大臼歯)の基礎知識

親知らずについて

まず最初に、親知らずについてご紹介します。親知らずは、別名「第3大臼歯」「智歯」と呼ばれます。これからより詳しくお伝えします。

1.生える位置・本数

【位置】一番手前の前歯から数えて8番目の一番奥

【本数】上下左右1本ずつの計4本

※全ての人に4本全ての親知らずが生え揃うわけではありません。

2.生える時期

【時期】20歳前後(目安17〜25歳)

親知らず以外の永久歯は15歳前後で生え揃うのが一般的ですが、親知らずはそのまま歯茎の中で埋まったまま生えてこない「埋伏」、一部埋まったままの「半埋伏」、そもそも親知らずがない方も多くおり、必ずしも全ての人に4本全ての親知らずが生え揃うというわけではありません。

3.正常な萌出と問題のある萌出の違い

親知らずの生え方は以下のような様々な条件に左右されて変化します。

  • 遺伝による影響
  • 萌出時期
  • 周囲の歯の位置や噛み合わせ
  • 骨格の状態

他の永久歯の萌出時期と比較して親知らずの生える時期は遅いために、永久歯の位置や骨格(顎の大きさ等)がある程度決定しており、親知らずの十分な萌出スペースが確保できない場合があります。これにより、親知らずが完全に横向きに生えて歯茎に埋まってしまった「水平埋伏智歯」や一部のみ歯茎から萌出した「半埋伏智歯」などがあります。

マウスピース矯正と親知らず抜歯の関係性

1.抜歯を前向きに検討するケース

親知らずの抜歯について

☑️スペース確保が必要な場合

歯列全体の状態を見た時に、矯正治療で歯を動かすのに必要なスペースが不足していると判断された場合、親知らずを抜歯して矯正に必要なスペースを確保することがあります。

※抜歯をせずに、歯のエナメル質を一部薄く削る「IPR(隣接面削合)」という方法により歯列矯正に必要なスペース確保を行う場合もあります。

特にマウスピース矯正は、奥歯を後ろに移動させることがワイヤー矯正より得意なため、小臼歯(真ん中の歯)の抜歯ではなく、親知らずの抜歯によって全体の歯を後ろに移動させる手法をとることがあります。

☑️親知らずの萌出方向が周囲の歯に影響する場合

矯正しても、親知らずが倒れ込む力で後戻りの可能性がある

矯正治療が完了したら、動かした歯は元の位置に少し戻ろうとします。この生体反応(=後戻り)を抑制し、矯正治療で実現した理想的な歯列状態を維持するために「保定装置(=リテーナー)」を数年間装着するのが一般的です。

しかしながら、親知らずが抜去されずに第二大臼歯(親知らずの手前に生えている7番目の歯)に倒れこむように傾斜したままの場合、矯正治療中や矯正治療完了後に歯を押す力が強くかかり、不必要な歯の移動や後戻りを誘発する可能性があります。

歯周病や虫歯のリスクが高まる

親知らずは歯列の中で最も奥に生える歯です。更に半埋伏状態であったり、手前の歯に倒れこむように傾斜して萌出したりと、歯ブラシが届きにくい上に食べ物の残渣が歯間に詰まりやすい歯と言えるでしょう。このような条件下に加え、矯正治療を行うとより歯周病や虫歯を促進する可能性が高まります。

矯正治療中に歯周病や虫歯になってしまうと、原則として矯正治療を一時中断して歯の治療を優先的に行う必要があります。歯周病治療や虫歯治療は症状の程度にもよりますが、歯の形状が変化してしまう可能性が高く、それに伴い、もう一度アライナーを作製し直すと共に、治療計画も変更する必要が出てきます。このように親知らずの存在は大々的な矯正治療の遅れに繋がるリスクも秘めています。

☑️親知らず自体がすでに炎症や感染を起こしている場合

含歯性嚢胞

埋伏している歯(特に親知らずに多い)の周囲骨にできる袋状の病変。初期は無症状の場合が多く、放置すると病変が増大して徐々に骨が溶かされたり、感染が発生して痛みや腫脹を伴ったりすることがあります。この場合の治療法は、原因となっている歯の抜歯や嚢胞の摘出が選択されます。つまり、矯正治療前に画像検査で親知らずにこのような病変が確認された場合には速やかに抜歯、もしくは嚢胞摘出を行う必要があります。

親知らずにう蝕・歯周病(智歯周囲炎など)が発生している場合

親知らずに虫歯や歯周病が認められる場合は、矯正治療を行う前に抜歯を選択する場合があります。矯正中に虫歯治療や歯周病治療を行うと、歯の形状や歯周組織、骨の状態が変化し、アライナーがぴったりと合わなくなったり、歯周治療に専念するために矯正治療を一時中断して矯正の効果が十分に得られなかったり、追加費用がかかったりと、様々な影響が予想されます。

2.親知らずを抜歯をしないケース

親知らずの抜歯についての診査

☑️抜歯の際に神経を傷つける可能性がある場合

下顎の骨には、「下歯槽神経」という重要な感覚神経が走行しています。下顎の皮膚や歯・歯茎、粘膜、下唇周囲や下顎の感覚を司る神経です。

この下歯槽神経付近に下顎の親知らずが埋伏している場合、親知らずの抜歯の際に神経を圧迫・損傷させてしまい、合併症として「下顎神経麻痺」が発生する恐れがあります。この場合、以下のような症状を損傷した神経側にのみ発生する場合があります。

  • 口腔内の粘膜の感覚障害
  • 下唇や顎の皮膚の痺れ、麻痺

予後は神経の損傷程度によりますが、軽症の場合は数週間〜数ヶ月で完全に回復する場合があります。一方、神経の損傷程度が大きい場合は、ある程度感覚が回復しても完全回復は見込めないケースがあります。

精密検査や画像所見からこのような合併症が高確立で発生しうると予測した場合は、抜歯を行うかどうか慎重な判断が求められます。神経に近い、または接している親知らずの抜歯は、大学病院の口腔外科医が土曜日に専門外来を行っておりますので、基本的に当院で抜歯を行います。入院が必要な場合は、広島大学病院で抜歯依頼を行っております。 

☑️親知らずを移植歯として利用する場合

大臼歯が虫歯等を理由に抜去されて親知らずは残存している場合、適切な条件下(親知らずがある程度正常な方向に萌出しているなど)に限り、親知らずに矯正力をかけて移動させて移植歯として利用することがあります。

☑️親知らずが正しく萌出しており、かみ合わせに参加している場合

親知らずは永久歯の中で最も萌出時期が遅く、骨格や歯の位置がほとんど決定してから生えてくるため、萌出スペースが狭くて横向きになったり歯茎の下に埋伏したままの状態だったりすることがあります。しかし、親知らずが立派にまっすぐに萌出し、且つ咬合関係においても重要な役割をになっている場合、抜歯することで噛み合わせが変化する可能性がある場合等は抜歯せずに温存しておくこともあります。

☑️他の歯を抜歯するケース

他の歯(例えば根っこの治療を行っており予後不良な歯)を抜歯し、親知らずを手前に移動させるケース。親知らずを一番奥の歯として機能させることにより、実質永久歯が28本ある状態で矯正を完了することができる大きなメリットがあります。

マウスピース矯正における親知らず抜歯のタイミング

1.マウスピース矯正治療について

マウスピース矯正について

近年注目を集めている「マウスピース矯正」ですが、どのような治療方法なのでしょうか?マウスピース矯正の特徴と具体的な治療行程を見てみましょう。

マウスピース矯正は透明な樹脂製の装置(アライナー)を使い、歯を少しずつ動かす矯正治療です。

特徴

  • 審美性に優れる:透明で自然な見た目
  • 可撤式:必要に応じて取り外し可能で衛生的
  • 安心素材:樹脂製素材を使用、金属アレルギーの心配なし
  • 自己管理が必要:1日20時間以上の装着が必要

仕組み

  1. 口腔内スキャナー(IOS)で患者様の歯型をスキャン
  2. スキャンしたデータをもとに3Dシミュレーションで歯の移動を計画
  3. 複数のアライナーを作製しお渡し
  4. 1〜2週間ごとにアライナーを自宅で交換しながら歯を動かす
  5. 歯科医院にて定期的なメンテナンスと経過観察を行う
  6. 矯正完了後は、保定装置を装着して後戻りを防止する装置を装着

2.抜歯のタイミングは矯正開始前が理想…理由は??

抜歯を行うと、歯茎や骨の形状をはじめとする歯周組織・骨格の状態に変化がもたらされます。もし、矯正治療を開始してから抜歯を行い、このような組織変化が起こった場合、マウスピース矯正で使用するアライナーを一から作り直したり、治療計画の中断・変更を余儀なくされたりと、様々な弊害が予想されます。また、抜歯に伴う合併症として、疼痛・腫脹などが発生することもあり、この場合マウスピースの装着が行えず、矯正治療が一時的に中断したり、後戻りしたりすることが考えられます。抜歯のタイミングを意図的に遅らせるケースもあります。例えば親知らずが骨の中に埋まっており、口腔内にでてくるまで時間がかかるケースの場合です。骨に埋まった抜歯は、骨を多く削らなければいけないため、痛み、腫れ、あるいは神経に近い可能性があるため、矯正を先に開始後に適切な時期に抜歯をするケースもあります。

まとめ(結論)

矯正歯科治療について

マウスピース矯正における親知らずの抜歯の必要性について詳しくご紹介してきました。矯正するからといって必ずしも抜歯を行うのではなく、採得した画像データなど根拠に基づいて、患者様それぞれの体質に応じた判断のもと、親知らずの抜歯の有無、タイミングを決定していることがご理解いただけと思います。

おひさま歯科では、患者様お一人お一人に寄り添った矯正治療をご提供しております。矯正治療の成功には患者様のご協力とご理解が必要不可欠です。歯並びや親知らずをはじめとして、お口のことで疑問に感じたことやお困りのことがございましたら、どうぞお気軽に当院にご相談ください。