「鼻水や鼻づまりが悪化すると、頭痛もひどくなる」
「副鼻腔炎と頭痛って関係があるの?」
「頭痛薬を飲んでも、頭痛がよくならないのはなぜ?」
副鼻腔炎(蓄膿症)は鼻の奥の副鼻腔に炎症が起こって、膿が溜まった病気です。ドロッとしたくさい鼻水、鼻づまり以外にも、溜まった膿が周囲の神経を圧迫したり、炎症が波及したりして頭痛を自覚するケースが少なくありません。
今回は、副鼻腔炎(蓄膿症)がどのような病気なのかを簡単に解説します。副鼻腔炎(蓄膿症)で頭痛がおこる原因や痛みの特徴、対処方法も併せて解説します。副鼻腔炎(蓄膿症)で頭痛を自覚している方、鼻水や鼻づまりがひどくなると頭痛もおこる方は、ぜひ本記事を最後までお読みください。
鼻副鼻腔炎診療の手引きによると、副鼻腔炎(蓄膿症)は「鼻副鼻腔の炎症により、鼻閉、鼻漏、後鼻漏、咳嗽などの呼吸器症状を呈し、頭痛、頬部痛、嗅覚障害などを伴う疾患」と定義されています。
簡単にいうと、鼻に炎症が起こり鼻づまりや鼻水・咳などの症状と、頭や頬の痛み、臭いの感じにくさがおこる状態です。
鼻副鼻腔炎は発症からの日数や原因で、いくつかのタイプに分類されます。
発症から4週間未満は急性鼻副鼻腔炎、発症から12週以上経過すると慢性鼻副鼻腔炎に分類されます。
原因別では、ウイルス性鼻副鼻腔炎や細菌性鼻副鼻腔炎などと分類します。
副鼻腔炎(蓄膿症)で頭痛がおこる人は少なくありませんが、なぜ頭痛がおこるのかはわかっていません。
しかし多くの患者さんの状態から、次の4つの原因で頭痛がおこっているのではないかと推察されています。
原因1 |
膿が溜まって空気の流れが悪くなり、副鼻腔内の圧力が変化し陰圧になったために周囲の神経が刺激される |
原因2 |
膿が溜まって周囲の神経を圧迫する |
原因3 |
副鼻腔の周囲の炎症が悪化し、周りの神経にも炎症が広がったために神経が刺激される |
原因4 |
上あごの歯や歯ぐきにおこった炎症が、上顎洞に波及し歯性上顎洞炎を発症したために上顎神経が刺激される |
副鼻腔炎(蓄膿症)の頭痛はズキズキしたり頭の血管が脈打つようになったりと痛み方はさまざまですが、次のような特徴があります。
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順に解説します。
副鼻腔炎(蓄膿症)が改善すると周囲の神経を圧迫しなくなり、炎症も治まるため頭痛を感じなくなるケースが多いです。
下を向くと副鼻腔に溜まった膿の位置が変わり、副鼻腔内の圧のかかり方が変化し、周囲の神経に圧力がかかるようになるため頭痛が悪化する傾向があります。
副鼻腔は鼻の奥にある前頭洞(ぜんとうどう)、篩骨洞(しこつどう)、上顎洞(じょうがくどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)の4か所で、それぞれ左右に計8か所あります。
前頭洞(ぜんとうどう)はおでこの近くにあり、膿が溜まると近くにある眼神経が刺激され目やおでこの辺りが痛みます。
篩骨洞(しこつどう)は鼻の近くにあり、膿が溜まると近くにある上顎神経が刺激されこめかみの周りや鼻の付け根が痛みます。
上顎洞(じょうがくどう)は、ほほの近くにあり膿が溜まると近くにある上顎神経が刺激されほほやこめかみの周りが痛みます。
蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)は、篩骨洞の奥にあり篩骨洞と同様に膿が溜まると上顎神経が刺激されこめかみ周囲が痛んだり、頭が重い感じがします。
また副鼻腔炎がひどくなると全部の神経に炎症が波及し、とても激しい頭痛を伴うケースもあるのです。
ここからは副鼻腔炎(蓄膿症)の頭痛の対処方法を紹介します。ポイントは次の3つです。
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副鼻腔炎が原因の頭痛は、副鼻腔炎の治療をすることで症状の改善が期待できます。具体的な治療法としては、抗生剤や膿を出しやすくする薬、炎症を抑えたりする薬を服用したり、内視鏡で狭くなった通り道を広げ膿を出しやすくする手術をしたりします。
鼻うがいは専用の洗浄液を使って鼻を洗うことで、鼻の奥に溜まった鼻水を出しやすくし症状の改善を期待する対処療法です。
副鼻腔の奥にまで洗浄液が届いて溜まった膿を出しているわけではなく、鼻うがいで鼻の通りがよくなることで粘膜の状態が改善し、自然に膿が出やすくなることを期待します。
あまりやりすぎると鼻の炎症が酷くなったり、手術や処置後などにはできなかったりするケースもありますので、鼻うがいをするときは医師に相談するようにしましょう。
頭痛薬は痛みを軽減してくれますが、あくまで対症療法です。副鼻腔炎(蓄膿症)が原因の頭痛の場合には、頭痛薬だけで完治させることは難しいでしょう。頭痛薬を服用し続けると頭痛薬が原因で頭痛になってしまうケースもありますから、早めに医療機関にご相談ください。
副鼻腔炎(蓄膿症)が原因で頭痛を自覚する方は少なくありません。中には、ご自身が副鼻腔炎(蓄膿症)だと気付いていないことも……。
当院では脳神経外科・歯科の観点から患者さんお一人おひとりの頭痛の原因を調べ、耳鼻科での治療が必要な場合には、近隣の医療機関へ紹介しています。
頭痛は原因に合わせた正しい治療で痛みを軽減し、片頭痛発作の頻度を減らすこともできますので、ぜひ当院へお気軽にご相談ください。
参考資料
頭痛の診療ガイドライン2021 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会
https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_2021.pdf