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医療コラム

医療コラム 2024.09.11

妊娠するとどうして頭痛が起きるの?【頭痛が治る人もいる!?】

目次

赤ちゃんが出来て嬉しいのも束の間、お母さんにはたくさんの体の不調が現れます。

妊娠することでホルモンバランスが崩れたり、つわりで頭痛が起きたりと
さまざまな原因があります。

今回は、妊娠すると頭痛が起きる原因と、その対処法について解説していきたいと思います。

妊娠時に起きる頭痛の特徴

特徴①:片頭痛

片頭痛は、頭の片側もしくは両側のこめかみや側頭部がズキズキとかなり強く痛む
だけでなく、吐いたり寝込んだりしてしまう人もいるほどつらい頭痛です。

元々女性に多い片頭痛ですが、エストロゲン(卵胞ホルモン)の変化にって、
脳内のセロトニンやカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)という
神経伝達物質のバランスも影響を受けます。

その結果、脳の血管が拡張したり、神経に炎症がおこったりして頭痛を自覚します。

妊娠初期に多いとされているのが片頭痛です。

もとから片頭痛を持っている方が、妊娠により女性ホルモンの分泌量が増えることで
自律神経が乱れ、頭痛が起こることがあります。

妊娠で片頭痛が治ることもある?!

上記で、妊娠すると頭痛が起きると言いましたが、反対に頭痛が軽減することが
さまざまな研究で示されています。

もとから片頭痛をお持ちの患者さんが、妊娠期間中は約80%の確率で
片頭痛発作が軽減したと報告されています。

特に妊娠後期では、顕著に改善するとの報告が多いです。

これは妊娠中期以降に女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の
血中濃度が高値で維持されるために発作が軽減されています。

しかし、出産後第1週で半数以上の患者さんで片頭痛が再発するという報告があります。

これは、出産直後の女性ホルモンの血中濃度の急激な低下や育児による負担
(睡眠不足や精神的ストレスなど)が原因と考えられています。

また、出産後は母乳育児をするほうが片頭痛の再発を抑える
可能性も示唆されています。

特徴②:緊張型頭痛

緊張型頭痛は、女性ホルモンの増加、貧血、肩こりや運動不足、ストレスなどで
筋肉が緊張し、血流が悪くなることで起きる頭痛です。

首から後頭部にかけて締め付けられるような痛みが特徴で、
重たくなったお腹を支え続けるために姿勢が悪くなりがちな妊娠後期に
起こりやすくなっています。

次に頭痛が起きる原因について、詳しくお話を進めていきます。

妊娠時に起きる頭痛の原因

原因①:ホルモンバランスの乱れ

先に説明したように、妊娠すると女性ホルモンが大量に分泌され
ホルモンのバランスが大きく変化します。

ホルモンバランスの変化により自律神経がうまく機能せず、血管の拡張や収縮が
乱れてしまうことで、頭痛を引き起こします。

原因②:貧血

妊娠中になぜ貧血になるのか、みなさんご存知ですか?

貧血とは血液中の赤血球の数が少なくなった状態です。

その赤血球に含まれているヘモグロビンという、酸素を運ぶためのものがあり、
貧血とは血液中のヘモグロビンの濃度が下がった状態とも言えます。

妊娠中は、「胎盤に酸素と栄養を送るために血液中の水分量が増える」
「お母さんの体に蓄えられていた鉄分が赤ちゃんに優先的に送られる」
という2つの理由から、赤血球・ヘモグロビンが薄まりやすくなり、
鉄分も不足しやすいことから、貧血になりやすくなります。

【胎盤に送るために血流量が増える】

妊娠中、お腹にいる赤ちゃんを育てるために胎盤に血液(栄養と酸素)を
しっかりと送る必要があり、妊婦さんの血流量は増加し続けます。

血漿(水分)の増加が多く、赤血球の増加が追いつかないことで
血液が薄まった状態になってしまいます。

これは、妊娠による生理的変化なので、心配はいりませんが
血液が薄まった状態はまさに貧血です。

【お母さんに体に蓄えられていた鉄が赤ちゃんに優先的に送られる】

妊娠後期になると、赤ちゃんの成長に必要なために、お母さんの体に
蓄えられていた鉄分は優先的に赤ちゃんに運ばれていきます。

ヘモグロビンを作るために必要なのが鉄分です。

このため妊娠初期に比べ、妊娠中期~後期にかけては今までの2倍以上の
鉄分が必要になります。

上記2つの理由、つまり血液中の水分が増えることと、
鉄が不足してヘモグロビンが作られないことから、貧血になやすくなります。

妊婦さんの貧血の多くは無症状です。

しかし、ひどくなると酸素を運ぶ力が不足し、体を動かしたときに動悸や息切れ、
頭痛、めまい、倦怠感などの自覚症状が現れることもあります。

原因③:運動不足やストレス

頭痛のなかでも、緊張性頭痛は運動不足、長時間の悪い姿勢、精神的なストレスが
原因だと言われています。

妊娠後期になると、お腹も大きく重たくなり、腰に負担がかかることから
外出する機会が減ってしまいます。

長時間同じ姿勢でいることで筋肉の緊張などが原因で頭痛を
引き起こす場合もあります。

また、大きくなった子宮に膀胱が圧迫されたりすることで、排尿回数が増え、
夜に何度も起きてしまい睡眠不足になることもあります。

睡眠不足からくるストレス、また初めての妊娠であれば出産や出産後、
控えている育児に対しての不安とストレスで頭痛を引き起こしてしまいます。

高血圧症候群が頭痛の原因の場合もある
お母さん、赤ちゃんが危険な状態になることも?!

妊娠高血圧症候群とは、以前は「妊娠中毒」と言われていた病気で、
妊娠中に高血圧がある病気のことを言います。

この病気は妊婦さんの5~10%におこると言われていて、比較的頻度の高い
妊娠合併症の1つです。

妊娠すると胎盤には血液が豊富に流れるようになりますが、
妊娠高血圧症候群では胎盤への血液が流れにくくなります。

そうするとお母さんの体は赤ちゃんにできるだけ血液を送ろうとして、
胎盤で血圧を上げるさまざまな物質が作られ、それによって血圧が
さらに上がってしまうと考えられています。

自覚症状はほとんどなく、妊婦健診などで高血圧を指摘・診断されることが多いです。

しかし、時には頭痛、重度のむくみ、急激な体重増加、目の前がチカチカするなどの
症状が出てくる場合もあります。

高血圧症候群が重症になると、お母さんに関しては、

・肝臓や腎臓の機能障害

・子癇と呼ばれるけいれん発作

・脳出血などの脳血管障害

・赤ちゃんが産まれる前に胎盤が子宮から剝がれてしまう常位胎盤早期剝離

などを起こしてしまいます。

また、赤ちゃんに関しては、

・赤ちゃんの発育が悪くなる胎児発育不全

・赤ちゃんの状態が悪くなる胎児機能不全

・赤ちゃんが亡くなってしまう子宮内胎児死亡

などを起こすことがあります。

このようにお母さん、赤ちゃんにとって非常に危険な状態になることもある病気のため、
妊娠高血圧症候群と診断された場合には慎重な管理が必要になります。

参考文献:日本妊娠高血圧学会
Q1.pdf (jsshp.jp)

妊娠時の頭痛を和らげる対処法

対処法1.鉄分の摂取

上でも説明したようにお母さんにとっても、赤ちゃんにとっても鉄分は
とても重要になります。

貧血状態を防ぐためにも、鉄分は積極的に摂りましょう。

鉄分は食事から簡単に摂取することができます。

具体的には、レバー、豚・牛肉など肉類全般は、ヘモグロビンの産生に
欠かせない良質なたんぱく質も多く含まれています。

また、鉄の吸収を促す「ビタミンC」は、緑黄色野菜や果物に多く含まれているため
一緒に摂取すると効率がいいです。

対処法2.血行促進

妊娠後期に多い緊張型頭痛は、ホルモンバランスの変化により自律神経が
うまく機能せず、血管収縮によって生じる血行不良も原因のひとつです。

血行を促すために、湯船に浸かったり、適度な運動やマッサージなどを
行ったりすると、凝りがほぐれて痛みが和らぐことも多いです。

目元や首元を温めたタオルなどで温めるのも効果的です。

対処法3.ストレス解消

緊張型頭痛の原因となる精神的ストレスの解消も大切です。

運動不足だと思ったら、適度なストレッチやエクササイズを取り入れてみましょう。

また、ストレスを感じたらご自身の好きなことや、趣味、身近な人と
話してみるなど、自分に合ったストレス解消法を探してみてください。

対処法4.ツボ療法

頭痛に効果的なツボの部位はたくさんあります。

天柱(てんちゅう):首の骨の両側にある太い筋肉の外側のくぼみ

→中でも後頭部の「天柱」は、痛みに関係する神経が

集まっている場所にあたり、東洋医学でも疼痛の緩和に活用されているツボです。

百会(ひゃくえ):頭頂部(頭のてっぺん)。

風池(風池):耳の後ろの骨と、後頭部のくぼみの中間。

ツボを押す際は、手のひらや親指で気持ちがいいと感じる程度に優しく押しましょう。

呼吸に合わせて押すと効果的です。

また、圧力を加えず、蒸しタオルなどでツボを温めるのも効果的です。

対処法5.頭痛薬の使用

妊娠中でも痛み止めを使用したい場面は多く存在します。

薬を飲む前に、不眠や過労、肩こりなどが原因の場合にはまず原因を解消しましょう。

痛み止めを飲み過ぎていると痛み止めによって頭痛を引き起こしている可能性もあります。

今起こっている頭痛の原因は何かを知って、正しい対処をしていくことが重要です。

これから妊娠中でも飲んで良い薬、飲んではいけない薬について解説していこうと思います。

カロナール錠(アセトアミノフェン):使用可

アセトアミノフェンは、昔から妊娠中の痛み止めとして使用されており、
妊娠中の痛み止めの第一選択とされています。

1回400mgで内服しますが、痛みが十分とれない場合には600mgまで
内服が可能です。

妊娠中や授乳中は普段とは異なる特別な体の状態のため、薬は慎重に使用する
必要があります。

ロキソニン錠(ロキソプロフェン)、ボルタレン錠(ジクロフェナク):使用不可

妊娠中期~後期の使用では投与により赤ちゃんの心臓や腎臓に影響し、
羊水の量が減ったり、赤ちゃんの心不全を引き起こすことがあります。

そのため、基本的には使用しないこととされています。

市販薬:使用不可

市販の痛み止めの多くは、NSAIDsと呼ばれる赤ちゃんの心臓や腎臓に
影響を及ぼす成分が含まれています。

自己判断での痛み止めの服用は避け、必要であれば主治医医に
相談するようにしてください。

湿布薬・塗り薬:使用不可

外用薬は内服に比べると体内に吸収される薬剤の量が少ないため、
赤ちゃんへの影響は比較的少ないとされています。

しかし、痛み止め成分の入った湿布を使用したことで内服薬同様にあかちゃんへの
影響が報告されていることから、インドメタシンやジクロフェナクなどのNSAIDsが
が含まれている湿布や外用薬は基本的に使用を避けるべきだと考えられています。

妊娠中に頭痛が起きたときは、無理せず病院へ!

妊娠中は、さまざまなトラブルに悩まされますが、
頭痛もお母さんにとってはつらい症状のひとつですよね。

血行改善、ストレス解消、ツボ押しなどセルフケアをしながら、
それでも頭痛がおさまらない場合には、無理せず医師に相談しましょう。

また頭痛は、まれに妊娠高血圧症候群という危険な病気が隠れていることも
説明しましたね。

お母さんや赤ちゃんの命を守るためにも、早めに相談をしてみてください。

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