Medical Column

医療コラム

医療コラム 2024.08.26

糖尿病の原因を理解して日常生活での予防につなげる!

目次

糖尿病という言葉は、一般的にも聞き馴染みがあると思います。

家族や身内が糖尿病という方も多いのではないでしょうか。

糖尿病とは、インスリンの作用不足に基づく慢性高血糖を主徴とする代謝症候群です。

「健康診断で高血糖で引っかかった」「糖尿病かも・・・」と不安に思われている方もいらっしゃると思います。

本記事では糖尿病について医師がわかりやすく解説していきます。

糖尿病ってどんな病気?

簡単にいうと、糖尿病とは血糖値の高い状態が続く病気です。

ご飯やパン、麺類、イモ類などの炭水化物を食べると胃腸で消化・吸収され、
ブドウ糖となって血液中に入ります。

血液中のブドウ糖の量(血糖値)が高くなると膵臓から分泌されるインスリンの働きによって
エネルギーに変わり、血糖値は正常範囲(約70~120mg/dl)に保たれています。

肥満、食べすぎ、運動不足などによりインスリンの分泌や働きに
障害が起こることで糖尿病を発症します。

高血糖が続くと、全身の血管がダメージを受け、さまざまな症状や合併症を引き起こします。

糖尿病には、大きく分けて次の2つのタイプがあります。

その2つのタイプの解説をしていきます。

【1型糖尿病】

1型糖尿病は、膵臓のインスリンを出す細胞(β細胞:ベータ細胞)が、
壊れてしまい、インスリンが出なくなるのが特徴です。

1型糖尿病では治療にインスリン製剤(インスリン注射)を使用します。

糖尿病患者さんのうち、1型糖尿病と診断される方は10人に1人もいません。

若い方を中心に幅広い年齢で発症し、生活習慣が関わる2型糖尿病とは
原因や治療方法も大きく違います。

1型糖尿病の原因

1型糖尿病は、生まれつき膵臓のインスリン分泌機能が低い場合や、
自己免疫などによって膵臓のβ細胞が破壊されることが原因です。

【2型糖尿病】

2型糖尿病は、最も一般的な糖尿病で、10人に9人以上はこのタイプです。

若い人でも発症する場合もありますが、40歳を過ぎてから発症する場合がほとんどです。

糖尿病になる要因はさまざまで、食生活などの環境因子と体質(遺伝)の
組み合わせで起こると考えられています。

2型糖尿病の原因

2型糖尿病の原因は、インスリン分泌量の低下とインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい)
こととされます。

  • 遺伝
  • 飲み過ぎ・食べ過ぎ
  • カロリー過多の食事
  • 肥満
  • 不規則な生活リズム
  • 睡眠不足
  • 過度のストレス

【こんな糖尿病の初期症状に当てはまったら
要注意!】

糖尿病の初期症状①:のどが渇く(口喝)

強いのどの渇きが慢性的に起こり、水分の摂取量が増える。

これは血糖値が上昇すると、腎臓が尿とともに糖を体の外に出そうとして
尿が多くなり(多尿)、体が脱水傾向になることが原因とされています。

糖尿病の初期症状②:全身の倦怠感

全身の倦怠感(だるさや疲れ)を慢性的に感じるようになります。

これはブドウ糖を細胞の中に取り込んで、エネルギーに変換出来なく
なってしまうことが原因です。

糖尿病の初期症状③:食べても体重が減る

糖尿病になるとインスリンによるエネルギーが生成が上手く機能せず、
体がエネルギー不足に陥ります。


不足分を筋肉や脂肪を分解して、補うため体重の減少につながります。

これらの症状以外にも、高血糖が長期化すると、徐々に糖尿病合併症が進行していきます。

糖尿病の合併症とは?

1.糖尿病神経障害

糖尿病神経障害は糖尿病患者に最も多い合併症です。

糖尿病で高血糖が続くと、末梢神経(運動・知覚・自律)の障害が起こります。

動脈硬化からくる神経細胞への血流不足が原因として挙げられます。

〈主要な症状〉

  • 手足のしびれ
  • 立ちくらみ、便秘などの自律神経障害
  • 傷が治りにくい、感染症にかかりやすい

2.糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は、日本では成人の失明の原因で上位となります。

まず網膜とは眼底にある薄い神経の膜で、ものを見るために重要な役割をしています。
網膜には光や色を感じる神経細胞が敷き詰められ、無数の細い血管(毛細血管)
が張り巡らされています。

高血糖により、網膜の細い血管は少しずつ損傷を受け、
変形したり詰まったりします。これを、糖尿病網膜症といいます。

こうなると網膜の隅々まで酸素が渡らなくなります。

また、新しい血管を作って酸素不足を補おうとしますが、
新しい血管はもろいため容易に出血を起こしてしまいます。

そのため容易に、硝子体出血や網膜剥離、緑内障などのほかの病気に進展します。

初期の段階では、自覚症状はほとんどないありません。

中期になると、目がかすむなどの症状が感じられます。
末期になると、視力低下や飛蚊症が起こり、さらに失明に至ることもあります。

3.糖尿病腎症

糖尿病腎症も慢性合併症の1つです。

現在わが国では、毎年新たに3万人以上の方が透析治療を始められていますが、
そのうち約4割の方が糖尿病腎症によるもので、透析が必要になる原因のトップとなっています。

糖尿病腎症は、糖尿病が発症してすぐに生じるわけではなく、
高血糖の状態が続いた場合に腎臓が傷んでしまうことで発症します。

腎臓の機能が低下することを「腎機能低下」「腎症」などと
呼びますが、とくに糖尿病が原因で腎臓の機能が低下した場合を「糖尿病腎症」と呼びます。

糖尿病腎症も高血糖が長く続くことで、動脈硬化が進むことが原因です。

腎臓の中にある糸球体という尿を作る組織でも、小さく細い血管が壊れ、
老廃物をろ過することが出来なくなるとされていますが、くわしい原因ははっきりしていません。

4.歯周病

歯周病とは、歯周病原細菌によって引き起こされ、歯肉や歯を
支えている骨などに影響を及ぼす病気です。

歯を失う大きな原因の1つであり、糖尿病の合併症の1つです。

歯周病が進行すると歯と歯肉の間の歯周ポケットが深くなり、歯を支える骨が解けてしまいます。

そのまま放っておくと、歯が抜けてしまうこともあります。

糖尿病の治療について

❙ 糖尿病治療の目的は「血糖コントロール」!

糖尿病治療の大きな目的は、血糖値を良い状態に保ちながら健康な人と変わらない
生活の質(QOL)を維持することです。

糖尿病は慢性的に血糖値が高い状態が続くことで、先程説明した糖尿病の合併症で
QOLが低下し、さらに健康寿命にも影響します。

❙ 「血糖コントロール」で合併症にならないようにしましょう!

糖尿病を治療しないで血糖値が高い状態を放置すると、
血管にダメージが徐々にたまっていき、神経や眼、腎臓など体の様々なところに障害を起こします。

初期の糖尿病は検査で血糖値が高くてもほとんど症状がなく、日常生活にも支障をきたしません。

しかし、進行による合併症が生じるとQOLを低下させ、健康寿命に影響を及ぼします。

血糖コントロールは合併症を予防し、健康な日常生活を送れるように貢献します。

でも、どうやって血糖コントロールをするの?

糖尿病治療には「食事療法」「運動療法」「薬物療法」が大切です。

加えて「歯周病の治療や予防」が大切となってきます。

糖尿病治療の内容はお一人ずつの糖尿病の状態によって、どの治療を主軸に置くかが変わってきます。

前述しましたが、1型糖尿病の方は自分自身でインスリンを作ることが出来ません。

そのため、1型糖尿病の治療はインスリン注射による薬物治療を中心にします。

これと並行して食事療法や運動療法を進めていきます。

これに対して、2型糖尿病患者さんは食事療法と運動療法を中心に
適正な体重を目指しながらインスリンの分泌能力、抵抗性を改善していきます。

食事・運動療法で不十分な場合には、薬物療法を検討します。

〇糖尿病の食事療法

食事で体内に取り込まれる糖の量やエネルギーのバランスなどを調整し
正常値に近い血糖値を維持していきます。

食習慣の改善が基本!

食事療法は日常の心がけが大切です。

「朝・昼・晩と三食を食べる」「バランスよく食べる」「ゆっくりよく噛む」といった
当たり前のことも意外と出来てないものです。

食生活を見直すことが、糖尿病治療の第一歩といえます。

また、間食については主治医と相談し、適量を決めて、上手な取り方を工夫しましょう。

バランスのとれた食事で栄養を過不足なく摂る

糖尿病の食事療法では、3大栄養素である「炭水化物」「たんぱく質」「脂質」
に加えて、ミネラル・ビタミン、食物繊維などもバランスよく摂取することが大切です。

  • 炭水化物:ブドウ糖となり、体のエネルギー源をつくる
  • たんぱく質:筋肉や臓器など体をつくる
  • 脂質:体のエネルギー源となり、ホルモンや細胞などをつくる材料になる

   

塩分・脂質を控える!

脂質が多い食品の摂り過ぎは、脂質異常症から動脈硬化の原因になるおそれがあります。

特にコレステロールや飽和脂肪酸が多い食品は控えめにしましょう。

また、食塩の摂取量が多いと、高血圧の原因になり腎症や網膜症をはじめとした
合併症が進行する危険性があります。

味付けの薄い食事を心がけるようにしましょう。

〇糖尿病の運動療法

運動療法により体内の糖が使われるほか、筋肉量が増えることで、
インスリンの働きを高め、血糖値を低下させる効果があります。

糖尿病の運動療法は、有酸素運動と筋力トレーニングが推奨されています。

有酸素運動は、中等度で「ややきつい」と感じる程度が推奨されています。

運動量の目安をウオーキングで考えると、1日に1万歩程度です。

筋力トレーニングでは、連続しない日程で週2~3回のトレーニングが推奨されています。

しかし、ご高齢の方や持病をお持ちの方は医師の指導の下で行い、
負荷の強すぎる運動は控えるようにしてください。

〇糖尿病の薬物療法

糖尿病治療の薬物療法では、飲み薬と注射薬があります。

インスリンの分泌をよくするものや働きをよくするもの、
糖の分解・吸収を遅らせるものなど、様々な種類の薬が使われます。

〇歯周病治療

最近では、歯周病による慢性炎症がインスリンの抵抗性を増加させ、
糖尿病を悪化させていることを示す研究データが多く出ています。

歯周病のある糖尿病患者さんに歯周病治療を行って歯周炎を改善させると血糖値が低下します。

歯を失わないということは、生活習慣病や認知症などの予防に大きく影響していることも
明らかになってきています。

歯周病治療を積極的に行うために、かかりつけの歯科医院を作り、
定期的にメンテナンスを行うことが大切です。

糖尿病でお困りの方は、
ぜひおひさま脳神経外科・歯科へ!

今回のお話をきいてみなさんは、糖尿病について少しでも理解が深まったでしょうか?

自分の抱える糖尿病を管理するために何ができるのか、どう行動すべきか情報を集めましょう。

糖尿病のことをたくさん知れば今後さらに糖尿病と上手く付き合っていけるでしょう。

今回の記事を読んだ方は、その第一歩になったと思います。

当院は、医科歯科連携を通して糖尿病患者さんにより良い治療を
ご提供できるようになることを目指しています。

また、栄養士も在住しておりますので、食事に関しての疑問やどうしたらいいのか
などもお気軽にご相談ください。