身体の中でも大切な脳に関わる医師として、長年、頭痛の診療にも携わってきました。
そんな私も片頭痛の経験があります。
はじめて発症した時のことなど、私自身の片頭痛にまつわるエピソードを紹介します。
30代の中堅脳神経外科医であったころの話です。
広島大学病院に勤務し、手術や研究などでやはり多忙な日々を送っておりました。
ある日、学会で東京出張がありました。
学会は準備には労力が要りますが、始まって現地入りすれば楽しいものです。
脳神経外科の手術と比べれば集中力は必要なく、発表自体に患者さんの命がかかっているわけではありませんので、日常診療から解放された時間となります。
学会が終わって、羽田空港から広島便に搭乗して帰広の途に就きました。
その機内で、やってきたのが「閃輝暗点」でした。
青いような緑のような、すりスリガラス状のものが視界に現れ、どんどん大きくなっていきました。
「これはマズイ、片頭痛が始まる!」、と財布の中やカバンの中を探しました。
片頭痛治療薬であるトリプタン製剤が、備えとして1錠は手持ちで入れてあるはずです。
しかし、いくら探しても見当たりません。
前の頭痛発作で使い果たしてしまって、補充していなかったようでした。
自宅には残りがあるはずですが、飛行機はまだ中間地点の辺りでした。
前兆のみで過ぎ去ってくれ…、と祈りながら目を閉じ、静かにしていましたが、残念ながら頭痛はやってきました。
段々と頭痛は強くなってきましたが、なるべく静かにして耐えるしかありませんでした。
片頭痛の発作時には、普段は気にならない機内アナウンスも耳に響いてしまい、頭痛も強まる感覚になりました。
これは聴覚過敏といって、片頭痛の特徴の一つです。
「暗く、静かなところで、横になれるなら横になっておきたい…。」、片頭痛の発作の時は、そのような心境です。
その後は、なんとか耐えながら家にたどり着き、薬を飲んで早く就寝しました。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
多忙な日々の中で学会に参加し、それが無事に終了して、あとは帰宅するだけという場面でした。
こうした、疲労がたまっている状況に加えて、それまでの緊張がふと緩んだときにも片頭痛は出やすいです。
普段なら何でもないような光の量、日差し、照明なども眩しく感じます。
また、それほど大きくない物音でも、頭に響いてしまいます。
いずれも、片頭痛の発作時に伴うことがある特徴的な症状です。
においに敏感になるという随伴症状が出る方もおられます。