身体の中でも大切な脳に関わる医師として、長年、頭痛の診療にも携わってきました。
そんな私も片頭痛の経験があります。
はじめて発症した時のことなど、私自身の片頭痛にまつわるエピソードを紹介します。
40代半ば、当院の開業準備中のことです。
広島大学病院の診療や手術の合間に、開業準備の時間をいただき、打ち合わせや近隣の先生方などへの挨拶回りなどで忙しくしておりました。
疲労が重なると、やはり出てしまったのが片頭痛の発作です。ちょうど自動車を運転して移動中でした。
カバンも持っておらず、急性期治療薬のトリプタンを持っていませんでした。
痛みをこらえながら自宅に立ち寄り、片頭痛治療薬が入った処方袋を手に取りました。とりあえずトリプタン製剤を内服して、また次の開業準備の打ち合わせへと向かいました。
しかし、30分…1時間…、と経過しても頭痛があまり良くなりません。
これは薬を飲むタイミングが遅れてしまったためと考えられます。
トリプタン製剤は片頭痛の発作が出て、痛みが出始めた初期に内服する必要があります。
今回は、薬を持ち歩いていなかったため、頭痛がピークに達してからの内服となってしまっていました。
そこで、処方袋の中にあった“別のお薬”を手にとり、追加内服しました。すると、徐々に痛みが引いていきます。
少し副作用で体が沈んでいくような感覚になりましたが、20~30分でそれも消えました。
この追加内服した別のお薬は「ラスミジタン(レイボー®)」でした。
2021年に新発売となった新しい片頭痛の急性期治療薬です。
今回のようにトリプタン系のタイミングを逃してしまった場合でも効果が期待できるとされています。トリプタン系と併用も可能で、トリプタン系で効果が不十分な場合の追加にも使用できます。
めまいの副作用が4割ほどの方に出るとされていますが、飲んでいるうちに慣れてきて出にくくなると言われています。
実際に私の場合も、以前に初めて飲んだ時にはめまい感と体が重い感じが出て、1時間くらい続きました。片頭痛自体でもしんどかったので、横になって休んでいたので、副作用へも対応できました。
ラスミジタン(レイボー®)は片頭痛の痛みの仕組みの、痛み刺激の元となる部分と、それを伝える部分の両方に作用するとされていますので、頭痛を抑える効果が高いです。
トリプタンで効果が不十分・トリプタンのタイミングを取るのが難しい、などでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。片頭痛は痛みをしっかりと取り除くようにしないと、慢性化して悪化する危険もでてきます。トリプタン系とラスミジタン(レイボー®)をうまく使い分けながら、頭痛発作を抑えるための工夫が大切です。