身体の中でも大切な脳に関わる医師として、長年、頭痛の診療にも携わってきました。
そんな私も片頭痛の経験があります。
はじめて発症した時のことなど、私自身の片頭痛にまつわるエピソードを紹介します。
20代後半の駆け出し脳神経外科医であったころの話です。
脳卒中や頭部外傷などの急患も多い総合病院に勤務し、緊急手術、入院患者さんの回診などで多忙な毎日を送っていました。
ある日、外来で患者さんの頭部CTを診ようとして、フィルムを眺めるのですが、何やら視野の中心がぼんやりしてよく見えません。
「おかしいな…。」と瞬きを繰り返しながら、一生懸命に見つめるのですが、やはりよく見えず、むしろ見えにくさは悪化していきます。
視野の中心にぼんやりしていたものが、何やら青いキラキラしたギザギザ模様に見えてきました。
しばらくすると、だんだんと頭が痛くなってきました。
あっ!!!
さっきのは「閃輝暗点(せんきあんてん)」だ!
そして、俺は片頭痛だ…。
脳神経外科医が片頭痛を発症し、自己診断した瞬間でした。
「典型的な片頭痛なので検査はしなくても大丈夫です。」と、一度はお断りしたのですが、上司の強い勧めで頭部CTを念のため撮影していただきました。
実際に撮影されてみるとやはり少し緊張します。
患者さんもこうした気分で検査を受けておられるのだな…、と身にしみました。
脳に異常はなく、脳神経外科医とはいえ、結果を聞くとほっとしました。
片頭痛の大きな特徴に「閃輝暗点」という前触れ症状があります。
視界の中にキラキラ、ギラギラした光のような、ギザギザ模様のようなものが現れてきます。
それが邪魔になって目の前の物や人が良く見えない状態になります。
この閃輝暗点が現れてから数十分後に、頭が痛くなってきます。
片頭痛の全てでこの前兆症状が出るわけではありません。
閃輝暗点が見えなくても片頭痛の可能性はあります。