後頭部の頭痛の原因は、くも膜下出血や脳の動脈の解離など生死にかかわるものから片頭痛まで多岐にわたります。
痛み止めを服用し様子を見てもよいケースから、すぐに医療機関を受診しなければいけないケースもあり、受診のタイミングや対処方法が難しいと感じられる方も少なくありません。
本記事では後頭部の頭痛の代表的な原因を解説します。次に、痛みの程度別に受診のタイミングの目安をご紹介しています。併せて対処方法も解説しますので、後頭部の頭痛でお悩みの方はぜひ最後までお読みください。
「頭痛の時はいつも後頭部が痛い」
「後頭部がズキズキする」
”後頭部の頭痛”といっても次のようなさまざまな原因があり、それぞれに痛み方に特徴があります。
そのほか |
代表的な後頭部の頭痛の原因について、順に解説します。
片頭痛は、脈打つようなズキズキする痛みが特徴です。ストレッチやアルコール、天気や気温・気圧の変化などさまざま原因で脳の血管が拡張したために神経や脳を刺激し痛みを生じているといわれていますが、そのきっかけや原因は完全に解明されていません。
片頭痛についてくわしくはこちらの記事で解説しています。
【意外と知らない】頭痛(片頭痛)の原因・診断・治療・予防方法【専門医が解説】
ぜひ、こちらの記事もご参照ください。
緊張型頭痛は、我慢できないほどではない鈍いズキズキする痛みが特徴です。
ストレスなど心の緊張や同一姿勢などによる体の緊張が原因で生じる頭痛です。強いストレスを感じると脳の痛みへの反応が変化し、敏感になったり、痛みをうまくコントロールできなくなったりします。
また長時間のパソコンやスマートフォン操作などで無理な姿勢や長時間の同一姿勢などが続くと、目の疲れや首や肩周りが緊張し乳酸が溜まって神経が刺激されることが緊張型頭痛の原因です。
後部神経痛は首の後ろから、後頭部・頭頂部にかけてズキズキ・ジンジン・ジリジリと痛むのが特徴です。そのほかに、ビリっと電気が走るような痛みを感じたり、違和感やしびれ感を覚えたりします。
後頭神経痛は脳や脳の周りの血管ではなく、頭の表面におこる神経痛です。猫背や首の骨の変形、長時間のパソコンやスマートフォン操作、ストレスが原因で血流が悪くなったり、筋肉が緊張したりして神経を圧迫していることが原因で後頭神経痛を発症します。
くも膜下出血は、“今まで経験したことがない”“バットで頭を殴られたよう”と例えられるくらい、とても激しい頭痛が特徴です。頭痛のほかにも、めまいや吐き気・嘔吐、視力低下、意識障害などがあらわれることがあります。
くも膜下出血は、脳をおおっているくも膜の周りの血管が破裂して出血し、脳を圧迫した状態です。速やかに医療機関を受診して出血を止める治療をしないと、頭の中でどんどん出血が広がって最悪の場合命を落としてしまうことがあります。
椎骨動脈解離は、突然ズキズキとした強い頭痛を感じるだけでなく、首の痛みを伴ったり顔や首の周りの違和感を覚えたりします。
椎骨動脈解離の原因は、首から脳に向かって血液を送る動脈の壁が裂けたり、剥がれたりしてしまう病気です。血管の壁が裂けたり剥がれたりしているだけであれば、保存的に経過をみることができますが、血管が裂けて破れてしまうとくも膜下出血を。血管が裂けて血液の通りが悪くなってしまうと、脳梗塞をおこすリスクが高くなり命にかかわることがあります。
そのほかの後頭部の頭痛の原因には、帯状疱疹があります。
帯状疱疹は水ぼうそうのウイルスが原因で発症する病気で、神経に沿ったズキズキする強い痛みと赤いぶつぶつや水ぶくれができるのが特徴です。もし頭痛を感じる場所の皮膚にできものができている場合には、ヘルペスが原因の可能性があります。
後頭部の頭痛を抱える方の中には、病院を受診すべきかそのタイミングに悩んでいる方もいるかもしれません。ここからは、後頭部の頭痛の痛みの程度別に受診のタイミングを解説します。
我慢できないくらい後頭部が痛いときは、脳出血など命にかかわる病気が原因のことがあります。できるだけ速やかに医療機関を受診してください。日中・夜間を問わず、脳神経外科のある大きな病院を選ぶようにしましょう。
後頭部の痛み以外に、吐き気や力の入りにくさなどの症状を伴うときは、命にかかわる病気が隠れている可能性があります。我慢できないくらいの痛みと同様に、できるだけ速やかに医療機関を受診してください。
片頭痛がひどい方の中には、仕事や日常生活に支障が出るくらい痛みを感じるケースも。適切な治療で頭痛の頻度や程度を減らすことができますので、医療機関を受診し頭痛の治療をはじめましょう。
週に数回、数時間で治まるような軽い痛みを感じる方は、急いで医療機関を受診しなくてもよいでしょう。しかし、痛くなる頻度が増したり、痛みが強くなったり、痛み止めが効きにくくなったりする場合には、頭痛が悪化している可能性がありますので医療機関を受診してください。
皮膚にぶつぶつを伴う痛みがある場合は、帯状疱疹の可能性があります。帯状疱疹は放置していると重症化して痛みが強くなったり、神経痛などの後遺症が残ったりする可能性があります。このような場合は、皮膚科もしくはかかりつけの内科を受診してください。
最後に、後頭部がズキズキする頭痛の対処方法をご紹介します。すべての頭痛がご紹介する対処方法で改善するわけではありませんので、ご注意ください。
我慢できないくらい後頭部が痛んだり、吐き気やしびれなど頭痛以外の症状がある場合は、命にかかわる病気が隠れている可能性があります。できるだけ早く、お近くの医療機関の受診をしてください。「どこに受診したらいいかわからない」「自分では医療機関を受診できないくらい頭痛がつらい」このようなケースでは、救急車を要請することもご検討ください。
医療機関を受診し、頭痛薬をもらうことも対処方法の一つです。医療機関では痛み止めのほかに、片頭痛をおこりにくくする片頭痛予防薬や、片頭痛発作をおさえる急性期治療薬(トリプタン製剤)などの薬をもらうことができます。お一人おひとりの症状や日常生活への影響度によって薬を選択しますので、お近くの医療機関へぜひご相談ください。
ズキズキする後頭部の頭痛の原因が緊張型頭痛の場合は、同じ姿勢を避けることで骨や筋肉・腱への負担を軽減する効果が期待できます。とくに猫背や首が前に出るストレートネックは首・肩周囲の筋肉に負担がかかって、血行が悪くなるため頭痛をおこすリスクをはらんでいますので、長時間同じ姿勢を避けるようにしましょう。
ストレッチやマッサージには、筋肉の緊張をほぐし血液循環を改善する効果が期待できます。気付いたときに、後頭部や肩・肩甲骨周りを意識的にのばすようにしてみましょう。
後頭部の頭痛が軽度な場合は、薬局やドラッグストアなどで市販の頭痛薬を購入し対処する方法もあります。しかし気軽に対処できるからといって、市販の頭痛薬を決められた量よりも多く飲んでしまうと余計に頭痛がひどくなったり、大きな病気を見逃してしまったりするリスクをはらんでいます。後頭部がズキズキする頭痛にお悩みの場合は、医療機関の受診をおすすめします。
後頭部の頭痛の原因は多岐にわたり、時に命にかかわる病気が隠れている可能性があります。
後頭部のズキズキする頭痛は、正しい対処方法・治療方法で症状の軽減が期待できます。
当院では、脳神経外科と歯科という2つの視点から頭痛の原因を見つける専門クリニックです。後頭部の頭痛に悩んでいる方や、CGRP関連抗体薬など最新の治療を受けたい方は、当院へお気軽にご相談ください。
参考資料
頭痛の診療ガイドライン2021 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会
https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_2021.pdf